季刊まちりょくvol.42
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6 「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり…」誰しもが一度は聞いたことのあるこの文句から始まる『平家物語』。12世紀に起こった源平合戦を題材に、13世紀ころに成立したものと考えられています。これを琵琶で節をつけながら語ったものが「平曲」です。 「平家にあらずんば人にあらず」。そのような発言が出るほどに権力を手中に入れた平家一門の盛衰を中心に、様々な人間模様を描き出した日本最古の軍記物語は、文字だけでなく盲目の琵琶法師たちによって脈々と語り継がれてきました。江戸時代までは幕府の保護のもと、儀式の場などでも唄われてきましたが、明治維新後はその保護がなくなり盲僧たちによって組まれていた当道座も解体。平曲を唄うことのできる伝承者は急速に数を減らしていきます。館山甲午 たてやま こうご 1894年生まれ。青森県弘前市出身。少年時代より、江戸時代から続く前田流の継承者であり平曲の調査研究に尽力した父・館山漸之進より平曲を学ぶ。昭和中期には平曲200曲すべてを語ることが出来る唯一の平曲師として知られ、国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」、県の「無形文化財」に指定される。宮城女子師範学校や仙台一中(現仙台一高)等では音楽教師として教鞭を執った。 1989年に仙台市にて逝去。後進の育成に積極的で、弟子に舘山宣昭、山内とも子、故後藤光樹など。現在に伝わる平曲の源流となっている。平曲とは 平曲には教本・楽譜となる「譜本」というものがありますが、口伝が基本の世界では、その唄われ方はどうしても少しずつ変化していくもの。 今回の甲午氏の平曲デジタル化は、現在に伝わる平曲の源流の形を知るうえで大変貴重なものです。

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