季刊まちりょくvol.42
16/62

14 住宅街の中、一見普通のお宅のように見える「般若堂」。実は掛け軸など、書や絵画の表装の修復も手掛ける表具店で、これまで各自治体の文化財などの修復を数多く手掛けてきました。創業は昭和11年、現在は二代目となる小林嵩さんと、小林倫明さん、安達清さんの3名で作業にあたります。 表装の基本である「裏打ち」。和紙を本紙の裏に張り合わせ、補強していくこの表装の肝ともいえる作業には、正しょうふ麩糊のりという古来より使われてきた糊を使用します。この接着力がもつのはだいたい100年。このことから、表具師は常に100年先を見据えて仕事をするのだそうです。翻って現代、つまり令和の今、修復の必要が生じているものには大正時代に一度修復されているものもでてきます。「大正の頃は良い職人がたくさんいたんだろうね」と小林さん。作業を進める中で、先人の腕の良さに感嘆することもあるのだとか。 表装の組み合わせは持ち主と話し合って柄を決めるのが一般的ですが、多種多様な素材や柄がある中、何をどう組み合わせていくかは非常に幅に富んでおり、提案側の知識やアイデアも求められます。(なんと屏風に描かれた絵を表具として使用することもあるそう!)主役である本紙に描かれたものを如何に魅せるか。伝統的で静的な印象のある表装ですが、ダイナミックでクリエイティブな世界でもあります。 壁や棚にみっしり詰まった箱には数々の軸物が収納されていました。修復のためにお預かりしているものかと思いきや、ご自分で集められたものがほとんどとのこと。練習を兼ねて修復するために、さまざまな作品を集めているのだそうです。また、修復に使用する資材として集めてきた和綴じ本の中にも興味深い文書があったりするなど、次々に素敵な作品や歴史的な資般若堂天井のあちこちに掛け軸をつるすためのフックが。まさに表具に特化した空間。

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る