季刊まちりょくvol.42
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12 “家具のまち”本町のレンガが敷かれた街並みを歩いていると、大きなガラス窓の中にたくさんのヴァイオリンが掛かっているお店が目に入ります。弦楽器工房Watanabeでは、ヴァイオリンやビオラ、チェロ等弦楽器の販売だけでなく各種調整・修理も行っています。 木で出来ている弦楽器は、湿度や温度といった環境の影響を大きく受けるそう。湿度が低い冬、湿度が高い夏と、一年を通して木の変化が楽器に現れます。弦楽器の修理・調整とは、そうしたものを元に戻すだけでなく、木の変化自体にあわせて他のパーツを調整していくことにあります。そして、その楽器ならではの音が出せるように補助するのが修理職人の腕と感性の見せ所。弦を支える駒は弦自体の張りの力で、その駒を楽器の内側から支える魂柱は板と板とで挟み込むことによって、それぞれ接着剤も釘もなく自立しています。細かく削り、一本一本異なる曲面にちょうどしっかりフィットするようにしないと崩れてしまう絶妙なバランス。楽器内部にある魂柱であれば、小さな穴から何度ものぞき込み、状態を確かめながら進めていきます。 店主の渡部さんが何より大切にしているのは、楽器の使用者が出したい音を出せるようにすること。響きをつくりだすのは、楽器それ自体や弓だけではなく、弦の素材や弓毛に塗る松脂など、多くの要素が関わってきます。楽器の持ち主とじっくり相談し、イメージの音に向かって調整していきます。 完成した楽器を渡すときには必ず試奏をお願いするそう。どんなに良くできたと思っても、お客さんが満足してはじめて出来上がりとなります。松脂などの付属品や楽器パーツの取り扱いも。松脂は品質によっても音色が違ってくるのだそう。弦楽器工房Watanabe2月の下旬にリニューアルしたばかりの店内。楽器が列をなして並ぶさまは壮観です。

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