季刊まちりょくvol.42
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8⇒P.10に続く 平家の壮大な話にふさわしく、全200曲、時間にして約100時間。 昔の言葉遣いそのままで全体的にゆったりした語りぶりは、最初はお経のように感じるかもしれません。 慣れるまでは、どこかで聞いたことのある場面から触れてみるのがおすすめです。 有名なシーンをピックアップしました。どこかで聞いたあのシーン・あの人物が平曲の世界への道しるべとなるでしょう。祇園精舎通番:001 平家物語の導入となる一曲。諸行無常を解きながら過去の偉人たち、そして平家の物語へ聴客を誘います。入道逝去通番:089 平家を率い、政界の頂上に登りつめた清盛の壮絶な最期。かけた水がお湯になるほどの高熱を出した清盛は、源頼朝の首を墓に捧げるよう言い残してこの世を去ります。敦盛最期通番:143 織田信長が好んで舞ったという幸若舞「敦盛」の基となった2人の邂逅。まだ年若い平敦盛と、その年ごろの息子を持つ熊谷直実の葛藤を描きます。那須与一通番:167 弓の名手、那須与一が平氏の舟に掲げられた扇を見事打ち落とします。壇ノ浦通番:171  遂に平氏に終止符が打たれる最後の合戦。「耳なし芳一」が平家の亡霊たちの涙を誘ったあの曲です。「口説」詞なり、下音に語る。一句の體にして地形なり。クワラリン レン トン ツン トン ドン ジャン「素聲」詞なり。素読みするように語る。節なく京の自然の詞にて語るが因なり。ツル ル ツン ヅン「中音」幽玄の體にて美麗に清艶を語る。クワラリン テン クワラリン テン レン クワラリン テン ツン ドン …「拾」玉の盤に落る如く語る。強壮活発に演じる。クワラリン レン クワラリン レン クワラリン クワラリン シャシャン シャン… 今回のデジタル化・音源の貸し出しにあわせて、年表や内容の要約、主要な登場人物、奏法のリストなども記載された「鑑賞のてびき」の制作も進んでいます。 館山甲午氏はそれぞれの曲の前や中で、各曲のタイトルや「撥名」と呼ばれる、奏法・曲調の指示を入れて語っています。少し慣れてきたらお弟子さんになったつもりで、その奏法にも注目してみましょう。初めての人におすすめの曲

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