季刊まちりょくvol.41
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41947年仙台市生まれ。2015年京都造形芸術大学写真コース卒業。1974年1級建築士取得。建築業に従事する傍ら、1984年より地域の風景の記録を始める。写真集に『あの日につづく時間―2011.3.11』。仙台ハッセルブラッドフォトクラブ、倶楽部645会員。現在は福島県浪江町、双葉町で福島第一原子力発電所事故による避難指示の解除前、解除後の風景の記録を重点的に行っている。髙橋 親夫 たかはし ちかおれ、人々の目に触れるにつれ、内包する意味を少しずつ蓄えて行き、気が付くとずいぶんと大きくなっている。 これまで撮りためた写真の一部は、大学や博物館に寄贈されている。今はどのように活用されているのですか?との問いに、髙橋さんは「さあ、どうなっているだろうね」と笑う。どこか清々しい表情は、写真が自分の手を離れたことに一種の安堵を抱いているかのようだ。写真を撮るその瞬間の場所との縁と、その後に出会う人との縁。どちらも同じように信頼していることが感じられた。 若いころに7か月で32か国もの国々を渡り歩いたという髙橋さん。当時綴った旅行の記録は近年冊子にまとめなおし、「読み終わったら誰かに渡して」と知人へ手渡したそうだ。きっと今も誰かがその旅行記を読み、心躍らせているだろう。こまめな記録とその行先への執着の無さはまさに髙橋さんらしい。取材の翌日も福島へ向かわれるとのこと。明日も新たな縁が髙橋さんを待っている。運河にところどころ架かる橋は、現在地を確認する重要なランドマーク。津波に耐えて今も変わらず対岸同士を結ぶ橋を渡る。住居跡に残る床タイルの名前と性質をパッと言い当てる。いつ、どんな思いで作られ、受け継がれてきたのかもその目には写っている。

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