季刊まちりょくvol.41
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12になった。同時に「演劇すごろく」と呼ばれた王道ルートは消滅し、地方の演劇人にとって東京公演は目標でもゴールでもなくなった。今は各々が自分の表現を追い求めているように感じられる。競い合うのではなく、切磋琢磨の文字通り、互いに磨き合っている。 仙台の演劇界はそれが顕著で、周りを見渡しても競う気はあまり感じられない。尊重し合う文化が形成されている。面白い作品を観ると悔しくなるのは私ぐらいなのだろうか。演劇界隈の人間が総じて大人になったのかもしれない。そういえば平均年齢も高くなってきた。 文化庁が社会包摂に関わる芸術活動を積極的に支援し始めたのも2011年で、ここ10年の演劇事情と深く関わる。社会とどう繋がるのか。演劇は社会にどう役立てられるのか。コミュニケーションとは、対話とは何か。そのようなキーワードで語られることが自ずと増えた。かくいう私も創作の傍ら、演劇教育の普及について仲間と模索している真っ最中で、教育や福祉の場に演劇が用いられないかと活動している。 この社会包摂の動きはこの先さらに加速するだろうし、演劇の需要が変容する可能性すらあると思っている。作品/メディアとしてではなく「場づくりのためのコミュニケーションツール」として演劇が求められた時、私は何を思うのだろう。いつだって未来は想像を超えてくるのだから、もう不思議ではない。 2030年にこの文を読むのが少し楽しみだ。2040年になったら息子が読んでくれるだろうか。ちょっとしたタイムカプセル気分で、この『まちりょく』を本棚に入れておこうと思う。仙台出身。東京にて演劇企画集団LondonPANDAを立ち上げ、制作や演出を手掛ける。ロンドンへの遊学を経て2016年より仙台に拠点を移す。演劇への間口を広げるワークショップなども数多く開催。六華亭遊花(落語家) 笑って、少しでも楽しい気持ちになりましょう。 なんて、空しく感じていた時期もありました。 毎月の寄席で会場となっていた百貨店の地下が使えなくなってしまい、4月の公演も半ばあきらめていた時、避難所から事務局

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