季刊まちりょくvol.40
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しての存在を保っている。 仙台はスクラップアンドビルドの街である。日ごと年ごとに様変わりしていく風景を惜しみつつも、前野さんはそれこそが仙台を都市として成り立たせている要因のひとつだと考えている。「変化していくのが都市だから」。仙台七夕以上の人出とも評されるほどにまで成長したイベントを、7年目にして終わりとしたのも、そうした想いが根底にあった。「一旦やめて、新しいものをと思ったんですよね」。 もともとは北仙台の調理学校を卒業し、調理師として働いていた経歴を持つ前野さん。次に訪れた仙台朝市は、料理人としても商売人としても思いのこもる場所だ。得られるのは新鮮な食材だけではない。例えば店を続けることにめげそうになるとき、前野さんは賑わう市場からエネルギーをもらう。「こういうの(売り込みの声)を聞いているだけでも良いんですよ。癒し。元気に働いている人を見るのが好き」。駅前の近代的なビルを背前野さんが「仙台朝市の希望」と呼ぶパン屋「マルモ」。どんなパンがあるのかはその日、その時間によるため、ショーウィンドーもあるが最終的にはお店の人に尋ねなければならない。「会話せざるをえないんです」と二人は笑う。景に、ぎっしりと詰まった戦後から続く路面店。ともすれば対立するような2つの世界は、しっかりと1つの景色の中に共存している。前野さんは、このような景色を見ることが出来るもう一つの場所へも案内してくれた。 様々な施設が入る複合ビルAERの最上階では、145.5mの高さから仙台の東西を見渡すことが出来る展望スペースがある。前野さんは遠方からのお客さんを連れてよくここを訪れるという。「目線を変えてみるっていうのが、好きなんですよね」。足元に広がる街の景色から少しずつ視線を上げていくと、泉ヶ岳に青葉山、太白山、そして海が視界に入る。「ほんとにちょっとの場所にきゅっとひしめいているでしょう、この街って。すごいなと思います」。 地上に戻って最後に向かったのは宮城交通の仙台高速バスセンター。2009年にリ3前野さんは小道に入った先にたたずむ小さなお店も見逃さない。道中、おすすめのお店やメニューの話が次々と出てくる。金港堂の藤原社長と。金港堂が現在の位置に移転した当時の地図を復元したものを眺める。一箱古本市のあとも交流は続いている。

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