季刊まちりょくvol.40
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42art reviewやんや ずっと待っていた。2020年7月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため上演利用ができなくなっていた、せんだい演劇工房10−BOXで、演劇公演の上演が再開した。 感染症の脅威を前に、演劇人は、私達の街は、文化活動を取り上げられてしまったように思えた。 そんな中、演劇の灯を絶やすまいと、高橋菜穂子さん、渡部ギュウさんは動画配信などを取り入れた企画で、仙台演劇人の活躍の場を作り続けてくれた。 再開の第一作目。主宰は前記の二人のYONEZAWA GYU OFFICE。仙台での演劇公演の再開に、これほど相応しいことはないだろう。 マスクをしっかり着け、受付にて検温をし、手のアルコール消毒と入り口で靴裏をしっかりと拭いて、待ち焦がれた劇場へと、足を踏み入れた。 客席は一席間隔で、席がリザーブされている。感染症対策の一つだ。座席札には…皆、往年の映画人たち。有名俳優や監督に挟まれ恐縮しつつ座っていると、舞台に作業服姿の俳優(松崎太郎)がやってきた。とぼとぼとパイプ椅子を並べ出す。すると前方に、外(劇場外の駐車場)と場内を大きなスクリーンで仕切った、鄙びた映画館が出現した。誰も座らないパイプ椅子の背を眺める。まるでコロナ禍で客がこなくなった劇場そのものに見えた。 スリーピース姿の映画監督(渡部ギュウ)と、先ほどと打って変わり真っ赤な蝶ネクタイの助監督(松崎太郎)が登場。新作映画のレセプションがあと五分に迫っているのだが、やり場のない不安感にあたふたする監督、優しく慰めつつも振り回される助監督。VIPからの席の確保を要求する電話が殺到するが、脱いだズボンや靴下で席を確保しようとしたり、ぐだぐだとギャグを飛ばしたり言い訳したりしながら、一向に準備が進まな「生と死の混在する境界」2020日本現代戯曲「名作シリーズ」Vol.1「今は昔、栄養映画館」菊池 佳南(俳優 青年団・うさぎストライプ)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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