季刊まちりょくvol.40
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2 前日の大雨で取材が危ぶまれたが、集合時間に空を見上げるとその影はすっかり消えていた。 「私、晴れ女なんです」と、軽やかな足取りで現れた前野さん。2009年から2015年までBook! Book! Sendai*が主催した本のイベント「Sendai Book Market」では、毎年6月開催という梅雨真っ只中の日程であったにも関わらず、雨が降ったのはたったの1回。それも小雨で、7年を通して天候に恵まれた。 仙台は昔、出版都市だったという。藩政時代から出版社が立ち並び、戦後も多い時には一番町だけでも8軒の書店が林立していた。だがそれも21世紀に入ると急速に姿を消していく。前野さんがBook! Book! Sendaiを立ち上げたのも、地元の本屋が無くなっていく危機感、何かアクションしないと、という想いがあったから。どうやったら人が本を手に取ってくれるのか、同じく本の仕事をしている仲間たちに声をかけて頭をひねった。 サンモール一番町を会場に本のイベントを行うというアイデアはすんなりと実現したわけではなかった。前例が無く、開催の許可を得るにも苦労した。しかしサンモール一番町商店街の理事長でもある地元書店・金港堂の藤原直社長の後押しもあり、なんとか開催にこぎつけ、いざ蓋をあけてみると予想を遥かに超えた人々が集まった。イベントの目玉企画のひとつ、「一箱古本市」*には毎回50人もの「店主」が集まり、商店街の端から端までを各々が持ち寄った本で繋いだ。 サンモール一番町の半ばにある壱いろは弐参横丁は前野さんの「好きすぎる」場所のひとつ。幾度とない再開発の波にのまれそうになりながらも、今日までその姿を残している「奇跡」の場所だ。横丁のなかに並ぶ店には変化もあるが、常に人が出入りし横丁と

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