季刊まちりょくvol.38
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69 秋からは土日の長時間レッスンが加わり、日々が慌ただしく過ぎていった。次々と渡される歌や振付を、限られた時間の中で必死に覚えた。欠席者のいるシーンはみんなでカバーし合った。家族よりも長く、濃密な時間を共に過ごしたかもしれない。ひたすら毎日ミュージカルのことばかりだった。衣裳合わせや通し稽古などを経ていよいよ大詰めを迎える。 結果、すばらしい舞台が完成した。仙台の架空の老舗食堂を中心とした温かな物語は、多くの観客の心へ届いたと思う。主人公の人生や時代の変化に自分の記憶をシンクロさせながら観る人も、劇中歌を口ずさむ人もいた。出演者の渾身のダンス、熱唱、熱演は盛大な拍手によって称賛された。全員が一丸となって「おかえり、ケヤキ食堂」の世界を創り上げながら、一人ひとりが確かに輝いていた。 過去を悔んだり、忘れ去ってしまうことはよくあるけれど、それらがあったからこそ今の自分がある。たくさんの記憶がこの道を支えている。すべては未来へ繋がってゆく。脚本から受け取れるメッセージはそのまま出演者への賛歌にもなるだろう。出演者、スタッフ、作品の想いが合致した見事な公演となった。お世話になった皆さまへ、感謝申し上げます。文・舞台芸術振興課 佐々木 彩主人公・清を時間の旅に誘う「時の案内人」たち「仙台市電」に乗って思い出の地へ〈プロジェクトの流れ〉2018年 9月    参加者募集10月    オーディション10月末   レッスン開始2019年 5月    脚本配布 7月    ダンス強化レッスン開始 8月    キャスト発表10月    週末集中レッスン開始       衣裳合わせ11月    通し稽古、衣裳付き稽古12月4日~  劇場入り12月7、8日 本番       (3回公演、       入場者数1,290名)〈ストーリー〉舞台は2019年のクリスマスイブ、西公園通り沿いの老舗食堂「ケヤキ食堂」。店を閉める決意をした店主の清のもとに、若くして亡くなった親友や時の案内人たちが現れます。時間の旅へ出た清が最後に見つけたものは…?清と食堂を取り巻く人々の交流を、仙台の街並みの変化や音楽・ダンスの移り変わりとともに半世紀にわたって描きます。〈作品データ〉おかえり、ケヤキ食堂出演:劇都仙台ミュージカルシアター総合監修:茅根利安(ココロノキンセンアワー)脚本・演出:渡部三妙子(おむらいすファクトリー)振付:朝日雅宏、YOKO(MJ Irene Musical Academy)音楽監督:只野展也

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