季刊まちりょくvol.38
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13い出の曲です。――日本からは武満さんを選んでくださっていますね。 カーティス時代にカヴァフィアン先生から紹介されました。先生は武満さんをよくご存知でしたし、彼女のために書かれた《遠い呼び声の彼方へ!》(1980)や《揺れる鏡の夜明け》(1983)を初演しています。2016年のカーティスの卒業リサイタルで何を弾こうか相談したところ、武満さんの作品はどう?と言われました。早速《悲歌》(1966)をはじめ、いろいろと録音を聴いてみました。カーティスの図書館にはカヴァフィアン先生のおかげか、かなり充実した武満作品のライブラリーがあるんですよ。その中で初期の《妖精の距離》(1951/89)に心惹かれ、この曲を演奏しました。ドビュッシーを想わせるような豊潤な音色があって、同時にとても空間性のある作品です。――イザイは6曲あるソナタの中で、クリックボームに献呈した第5番を選ばれています。 〈曙光〉と題された第1楽章がお気に入りなんです。イマジネーションがとても刺激される音楽で、弦が何本もあるかのごとくさまざまな音色が次々と出てきますし、イザイが生み出した緻密な絵画を描くような特別なテクニックがありますが、それを派手に見せびらかすのではないところも見事です。一方、第2楽章の〈田舎の踊り〉はとてもクールでドラスティックな踊りで、前の楽章の“日の出”と繋がって、そこから生まれた命が、最後に向かってとてもエキサイティングに展開していくところが大好きです。――最後はブラームスの第2ソナタです。 3つのソナタの中で最後に勉強したのがこの第2番でした。そして3曲の中でこれが一番好きです。温かくてフレンドリーで、そして豊か。本当に色々なものが沢山詰まっています。――シャノンさんはクラシック音楽のどこに惹かれるのでしょうか。 言語と似てさまざまな種類が存在し、多様性に富んでいる点が特に興味深いと感じます。言語を学ぶのと同じように、音楽を通じてさまざまな歴史や文化、人ヒューマニティ間性を知ることができるところが素晴らしいですよね。(2019年12月13日 川崎市内にて)*現時点ではすでに終了。その後、2020年1月には病気でキャンセルしたリーラ・ジョゼフォウィツの代役として、ヴァーモント交響楽団でチャイコフスキーのコンチェルトのソリストも務めた。

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