季刊まちりょくvol.38
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 ――改めてコンクールを振り返り、当時や優勝後の気持ちをお聞かせいただけますか? 以前にも国際コンクールに出場することはありましたが、それは自分の実力を試し、経験値を高めるためでした。でも仙台のコンクールでは、年齢的なこともありますが、演奏者として自分の演奏をもっと聴いてもらいたい、名前を知ってもらいたいという意識が強く、より集中して曲の理解を深め、準備をしてきました。ですから自身の演奏が認められて嬉しかったですし、何より優勝したことでたくさんのチャンスを得ることができ、とても感謝しています。――優勝後、仙台フィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェンの協奏曲第2番をはじめ、日本フィルハーモニー交響楽団ともラフマニノフの協奏曲第3番で協演されるなど、日本でも演奏の機会がありましたね。 はい。このほかに、韓国では仙台の第5回コンクールで優勝したソヌ・イェゴンさんのプロジェクトに参加させて頂き、とても有意義な経験になりました。今後は6月と9月に韓国でリサイタルを行い、ドイツのボーフムでも演奏予定です。また8月には韓国のソンナム・フィルハーモニック管弦楽団の定期演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番を弾くことが決まっています。――気持ちの上での変化はありましたか? コンクール前も後も「音楽を通じて何をしなければいけないのか」「何のために演奏しているのか」を模索していますが、演奏者としてどういう色を出し、アイデンティティをどう表現すれば良いのかは、なんとなく確立できてきたように思います。10⇒P.8から続くチェ・ヒョンロク聞き手・文:正木裕美(音楽ジャーナリスト)インタビュー 1「仙台での優勝のおかげで、演奏の機会が増えました」 2020年1月、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演のために再来仙を果たしたチェ・ヒョンロク。リハーサルの合間に、コンクールでの優勝を経て変わったこと、変わらないこと、そして、これからのことについて、現在の心境を語ってもらいました。

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