季刊まちりょくvol.37
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5 奈良市にある福祉施設。40年前から福祉とアート、双方の視点から障害のある人の生きる場づくりに取り組んでいる。エイブル・アート・ムーブメント(可能性の芸術運動)の発信拠点。6 TAP(TOGETHER ACTION PROJECT)。NPO法人とっておきの音楽祭が仙台市と恊働で取り組んでいる表現活動による障害者差別解消、障害者理解の促進に関するPR事業(2016年〜)。13始めたり6と、事業の幅が少しずつ広がっていくのが楽しいというのはあります。音楽祭も来年で20周年なので、いよいよやめられなくなってきました。柴崎:私も、障害のある人やその家族、そこに関わる人たちが楽しさや必要性を求めて集まってくるから、ものごとがどんどん転がっていってやめられなくなってしまいました(笑)。自分の得意不得意とは関係なく、今、何が必要かという視点にたって、美術だけでなく、ライセンスビジネスの仕組みをつくるなど、いろいろやってきました。 もちろん「楽しい」というのは活動の大きな力の一つですが、「個人の自由を保障する」「違いを認める」といったアートの特性を、障害のある人を取り巻く状況を変えることに活かしたいという思いのほうがより強いです。障害のある人がアートを通して思いを表現できた、表現を通じてその人に対するまわりの理解が変わった、家族の状況が少しでもよりよい方向に動いた、そういった、アートを通じて起きる作用に突き動かされて今までやってきたように思います。アートの「価値」や「見かた」をもっと自由に松﨑:創作室での活動に携わるようになって、美術館に展示されるものと、創作室でつくられるものとの関係についておのずと考えさせられるようになりました。公立美術館では、作品を収集するには合理的な理由が必要で、結果的に多くの人が評価するものが収集されがちです。アートの価値や評価は時代によって変わっていくもので、それを歴史として集めるのが美術館だと考えています。ですから、美術館は、同時代のアートにとっての絶対的な評価軸だというわけではありません。むしろ、美術館の外にあるアートの世界は、もっと広い視野で見ていく必要があると、私自身は考えています。どんなにたくさんの他からの評価があっても、「価値はあくまで自分自身の中にあるんだ」という根っこを持っていないと、満足できないのではないかと思います。柴崎:宮城県美術館で聴覚障害の方たちと一緒に作品を観るプログラムを実施したときのこと。最初に学芸員さんが「ここにある作品は上手いから展示されているのではない」と言って、参加者のみんなが倒れそうになっていました(笑)。美術館は、人間が何を発見したか、という「歴史」として意味のあるものを収集しているんだよと語りかけるのです。ですから、人はどのように「光」を発見したか、戦争をどのように表現したか、といった視点で作品を展示したり、鑑賞したりすることもできるんですよね。 作品の「見かた」ということでは、特に現代アートや障害のある人の作品は「これはなん

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