季刊まちりょくvol.36
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84art reviewやんや 仙台シアターラボとシア・トリエの合同公演を観劇した。 シアターラボの「構成演劇」は、台本を使用せずにテーマを用いてさまざまな要素を色々な表現で作り、構成し、ひとつの作品にする。この手法は私が所属する「えずこシアター」でも10年以上も用いられているので馴染みは深いが、今回は劇場以外でその構成演劇がどのように上演されるのか楽しみだった。 以前、自分が所属する劇団の先輩から「我々が普段公演を行っている劇場という空間は守られた空間だ」という話をされたことがある。それは、劇場は演じる側が有利なように照明や音響、舞台セットや役者の動線、客席などが配置されていて、演じる側にアドバンテージがある状態で観客を迎える空間になっているということだった。 今回の公演はそんなアドバンテージが一切ない状態で、公演する美術館のルールに従っていろいろな制限があるなかでの作品づくりだっただろう。そんな圧倒的不利な状況にあえて挑んでいく姿勢が、台本を使用せずにいろいろな要素や表現を構成して観客へ提示しているシアターラボの作品づくりや表現方法と一致していると感じた。 分断というテーマでの公演だったが、作中いろいろな場面で互いの主張や提案を受け入れられない場面が登場する。互いの主張が相容れないことがわかった時、実力行使し相手を排除する者、互いに別々な道を歩む者など、登場人物はそれぞれ自分と相手を分断し、互いに守りに入ってしまう。他者を認めないということは、結局は自分も認められないという結果になってしまう。古くから分断の歴史は相手から裏切られた経験から自分を守るために他者を隔絶するということから来ていて、それを乗り越えていくためには相当な勇気が必要だ。大切なものを交換し、そして互いに返しあうことで新しい発見と出会いを求めて劇場を飛び出すということ仙台シアターラボ シア・トリエ合同公演 Fukushima Meets Miyagi Folklore Project #3『BABEL』長谷野 勇希(俳優/えずこシアター)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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