季刊まちりょくvol.36
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2 梅雨真っ只中の6月中旬にもかかわらず、取材当日は久しぶりの晴天。その天気にも負けないはつらつとした笑顔で現れたランニングウェア姿の松山冴花さん。というのも、第2回仙台国際音楽コンクール第1位受賞(2004年)をきっかけに何度も仙台を訪れてはいるものの、なかなか仙台の街を散策する時間がないという松山さんが紹介してくださったのが、ランニングコースだったのでした。 当時交際中だった現在の夫にランニングに誘われて一緒に走ってみたものの、彼のペースに全くついていけなかったのが悔しくて走り始めたのをきっかけに、以来朝のランニングが日課になったといいます。今では公演で訪れる都市それぞれにお決まりのコースがあるのだそうです。仙台では、仙台駅周辺を起点に、国道45号沿いに小田原、原町、苦竹と東方面に走り、日の出町で南下、野球場や陸上競技場を右手に見ながら新寺通を走ってスタート地点に戻るという全長約11㎞のルート。「方向音痴だから、迷わない道を選んだだけなんですよ」と堂々と宣言した松山さんですが、仙台を知る人が見るとここはまさに「宮城野原」をぐるりと一周するコース。古くは萩の名所として多くの和歌に詠まれた歴史のあるエリアを選ぶとは、アーティストならではの嗅覚が無意識のうちに仙台の“コア”をとらえていたのかもしれません。 ランニング歴10年という松山さんに仙台の街並みの印象を聞くと、「仙台駅周辺がずいぶん変わりましたよね」とのこと。それもそのはず、松山さんがランニングを始めた頃といえば、仙台駅東口の再開発が進み、東北楽天ゴールデンイーグルスが宮城球場に本拠地を構え、街の風景が大きく変わりつつあった時期とちょうど重なります。ランニング終盤の山場は、貨物線をまたいで架かる薬師堂橋。この登り坂がゴールまであと少しの合図。一気に駆け上がる。ランニング姿はさながらアスリート。上半身が全くブレないフォームは見ていて清々しい。ランニング中は、音楽を聴きながらただひたすら走ることに集中する。

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