季刊まちりょくvol.36
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15作品紹介 「やることさえ決まればできるんですよ」と語る川俣さん。最近手がけた大規模な作品をひとつご紹介します。le Belvédère de l’Hermitage(フランス、ナント/2019年)構想から4年間をかけ、今年7月に完成したばかりの最新作。ロワール川を臨む地上20メートルほどの高さの崖から、空に飛び出したような「見晴らし台」。川俣さんのプランをナント市職員で構成された専門家らが忠実に制作しました。川俣さんの考える「アート」 アーティストとして、期待されているものをつくるのではなくて、「こんなものがアート?」というものをつくり続けていくのがアーティストではないかと考えています。そうでないと、逆に「アート」を規定してしまうことになる。特に僕の場合は、「使えるもの」をつくっているからアーティスティックには見えないかもしれないけれど、つくっているのは大工さんではなくてアーティストだし、つくり方も仕上げ方も違う。そこが大切なのだと思います。 僕のプロジェクトは、ある種のインフラづくりだと思っているので、地域のみなさんに使ってもらうことでどんどん違うものに変化していきます。ですから、プロジェクトにしても「終わり」についてはあまり考えていません。僕がつくって、その後みんなが使いこなしていく、そんな感じになってくれればいいなと考えています。©Tadashi Kawamataました。これは新浜がコミュニティで動いているのと対照的です。荒浜では、地域の動きと一定の距離感を持ちながら、僕たちも勝手にどんどんやってみたら共振が生まれるのではないかという期待もあります。 貞山運河はやっぱりきれいだし、歴史遺産でもあるし、使わない手はないです。震災ということはあるけれども、活用することでまた町と海がつながっていく。船で行き来するとか、活用する人がもっと増えてくれば、船溜まりを整備しようとか、行政レベルの大きな動きも出てくるのではないかと思います。そういった意味では、地域のみなさんが取り組んでいる「渡し舟とフットパス」などの活動は重要ですね。

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