季刊まちりょくvol.36
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13川俣さんやプロジェクトのスタッフとともに木道制作作業に励む。 このプロジェクトに参加して2年目になりますが、建築の分野にいる私にとっても、アートから学ぶことは多いです。東日本大震災の被災地域で活動する今回のプロジェクトは、ある意味川俣さんにとっても特別なものではないかと思います。そのなかで、川俣さんは「僕らはよそ者だ。外から来て新しい新浜をつくるんだ」といったことを言っていました。復旧・復興というと以前の暮らしの状態に「戻す」ことをまず発想・計画しがちですが、川俣さんは「つくる」と言われたんですね。もちろん、忘れないこと、悲劇を繰り返さないことは大切ですが、それだけでは前に進まないということを川俣さんと作業を共にするなかで、私自身も強く意識するようになりました。こういった視点は、東北で建築を学ぶ学生として震災にどのように関われるかと悩んでいた僕にとって、大きな道筋となったと感じています。 また、ただ作品を作って美術館に展示するのではなくて、長い時間をかけて、人を巻き込みながらプロジェクトを動かす、といったスタイルもアートになるということも僕にとっては大きな気づきでした。川俣さんの新浜のプロジェクトでは、フランスや韓国、そして日本各地から集まったスタッフで作業を行います。言葉も背景も違う人と作業を共にすることに最初はとても緊張しましたが、いざ始まってみるとコミュニケーションがとてもスムースで驚きました。各々が自分で考えて、役回りをうまく分担しながら作業を進めていく、そんな自由な雰囲気があってとても楽しかったです。また、地域の方も畑で採れた野菜を差し入れてくださるなど、本当に親切にしてくださいました。川俣さんの作品でありながら、いろんな人の思いや手が入っているのが、すごく面白いですね。 プロジェクトを通じて、たくさんの出会いで世界が広がりましたし、いずれ、社会にアートがもっと必要になってくるのではないかとも考えるようになりました。社会に出た後もこの経験を活かしていきたいですし、何らかのかたちで川俣さんのプロジェクト、そして仙台に関わり続けていきたいと思っています。髙橋史弥さん東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻 修士課程1年元・ボート部の経験を活かして「みんなの船」の船頭としても大活躍。食事も大切なコミュニケーション。(写真提供:髙橋史弥)プロジェクトを通じて出会った方の声

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