季刊まちりょくvol.35
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41963年宮城県多賀城市生まれ。現在、仙台市在住。23歳の時に広告スタジオに勤務、樋口徹氏に師事する。1987年からフリーランス。1995年初の写真集『KUMANO』出版。1997年に写真新世紀展優秀賞(森山大道選)、翌年年間特別賞を受賞。1999年度宮城県芸術選奨新人賞、2016年度宮城県芸術選奨受賞。個展、グループ展、写真集などで精力的に作品を発表する傍ら、2001年に仙台の街を1万枚の写真で記録するプロジェクト「仙台コレクション」を始動。代表として、これまでに写真集を第3巻まで刊行し、活動は現在も継続中。伊藤 トオル いとう とおる展覧会の準備に向けて、15、6年前のこのエリアの写真を見直してみると、改めていいなと感じる。「今は〈東口〉と言われていますが、昔は〈駅裏〉って言われていましたよね。〈裏〉という言い方が適当ではないかもしれないけれど、光の当たる華やかな所だけでは疲れるじゃないですか。そういう場所も絶対必要だと思うんですよね」 「10年間で1万点」という目標を立てて始めたプロジェクトですが、現在のコレクションは約7,000点強。当初の予定より時間がかかった理由はさまざまにありますが、やはり東日本大震災の影響も大きかったといいます。震災後、仙台コレクションが評価される機会が増えてありがたいと思う反面、記録するという行為が震災と避けがたく結び付いてしまうことに抵抗を感じ、コレクションの写真が撮れない時期もあったといいます。震災から8年、環境の変化もあり、昨年からまた「ハイピッチで」活動しているとのこと。「2020年に1万点達成を目指します」と笑顔でお話しくださいました。 写真家としてのスタートを決定づけた樋口徹さんとの出会い、そしてそこで出会った数々の写真家への敬意を胸に、伊藤さんはこれからも写真と、街と、向き合い続けていきます。初の写真集『KUMANO』(洋々社、1995年)[左]と『夏芙蓉 okinawa2003』(蒼穹舎、2004年)[右]は、いずれも小説家・中上健次の世界観にインスピレーションを得た。「僕の写真はある種、過去の写真家や小説家へのオマージュでもあるんです」と伊藤さん。「仙台コレクション」の「記録性」に焦点を当てた活動は、ウジェーヌ・アジェ、田本研造といった写真家へのオマージュでもある。

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