季刊まちりょくvol.35
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14古本あらえみし 出版にとどまらず、本にかかわるイベントの開催や仙台短編文学賞実行委員会の運営など精力的な活動で注目を集める仙台の出版社「荒蝦夷」が古書店をオープンしました。仙台駅東口から歩くこと約5分。大通りから一本奥に入り、さらに小道を入った閑静なエリアの、2階建ての民家がお店です。 玄関のドアを開け、用意されたスリッパに履き替えて暖簾をくぐると、壁一面に本がぎっしり。「災害を読む」「東北を読む」「ミステリ・幻想文学」「写真集」など、独自の分類で本が並べられています。現在取り扱うのは、荒蝦夷代表の土方正志さんが、学生時代から東京での編集者・ライター時代を経て現在に至るまで、仕事や趣味で収集した蔵書約2万点です。 古書店開業にあたっての思いをたずねると、「特にないんですよ」と茶目っ気たっぷりな笑顔で答えてくださった土方正志さんと千葉由香さん。長年本づくりに携わってきたお二人にとって、「本を売る」という意味では出版社も古書店も同じ、「これまでやってきたことの延長線上」とのこと。だからこそ、2階に出版事務所を構え、1階で古書店を営むという発想がごく自然に生まれたのかもしれません。 長らく「本屋がない」と言われていた仙台駅東口。出版を軸に複数の事業を展開する自分たちのスタイルなら可能性があるのではないかと、この場所での出店を決めました。気がつけば「仙台駅に一番近い古本屋」。地元の人だけではなく、遠方の「古本マニア」も気軽に訪れることができます。目指したのは土方さんが愛した「昭和の古本屋」。壁いっぱいに本が並べられた空間に身を置くと学生時代を思い出して嬉しくなる。店内には仕事を通じて土方さんのもとに「自然と集まってきた」逸品がさりげなく展示されているのを見つけるのも楽しい。アットホームな雰囲気につい「ごめんくださ~い」と声をかけてお店に入る人も。暖簾の先にどんな本が待っているのか、期待がふくらむ。2019年4月オープン

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