季刊まちりょくvol.35
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12 人間国宝・芹沢銈介(1895〜1984)の型絵染作品と世界各国の工芸品を収蔵・紹介するミュージアムとして1989年に東北福祉大学国見キャンパスに開館した芹沢銈介美術工芸館。美術・工芸ファンに長らく愛されてきたこのミュージアムの移転のニュースには驚いた方も多かったのではないでしょうか。移転先は同大学の仙台駅東口キャンパスの2階。 「移転が決まったときは、正直不安もありました」とお話してくださったのは学芸主査の本田秋子さん。これまでのお客さんがついてきてくださるか、芹沢銈介の作品世界を楽しんでもらえる空間をつくることができるのか、考えなければならないことが沢山あったといいます。しかし、約6ヶ月間にわたる準備期間を経て開催した移転記念展「人間国宝・芹沢銈介~文様万華~」での来場者の様子をみて、不安は期待へと変わっていったといいます。 記念展のアンケートでは来場者のうちなんと約半数が「初めて訪れた」と回答、美術工芸館を目的に訪れる人が多かった国見キャンパス時代には出会えなかった来場者層の出現は大きな手応えとなりました。また、什器が備えられた展示空間からひと続きの大きな空間に移転してきたことで、仮設壁、立体展示など新しい展示手法に挑戦できるようになり、これまでとは違った芹沢作品の魅力の伝え方も発見することができました。東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館館銘板は、国見キャンパスで使用していたもの。開館以来の歴史を守りつつ、新天地でさらに挑戦を続けるようという学芸員のみなさんの思いが伝わってくる。受付と事務所を区切る窓ガラスには型絵染に使われる型紙が。以前館内展示のために準備して使わなかったものを活用したとのこと。事務所からもお客様の雰囲気が感じられてよいのだとか。生活をデザインする工芸の精神が、ここにも息づいている。学芸主査 本田秋子さん「宝箱を開けるときのわくわくするような気持ちになっていただける美術館を目指しています」2019年1月オープン撮影:芹沢銈介美術工芸館

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