季刊まちりょくvol.34
52/76

50art reviewやんや 薄曇りの仙台、シルバーセンターには、開場の13時前から、客が集まり始めていた。チラシによれば、“仙台が誇るサックス界の新星”という熊谷駿のコンサートが今まさに行われようとしている。しかし、ロビー脇の交流コーナーでは、マージャンに興じている大人たちの声が聞こえるため、夜とお似合いのジャズという感じはない。 ところが、会場の中は全く違っていた。ステージには、出番を待つ主役のサックスが鎮座し、上手にはドラムセット、中央奥側には少し高めの椅子とギター、下手にはピアノが配置されている。そして、会場の交流ホール304席がほぼ埋まった定刻13時半、メンバーたちが登場する。ピアノの垣本拓海、ベースの宮地遼、ドラムのNATSUMI、そして最後に熊谷駿。その瞬間、ホリゾントが青に染まった。ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」のジャケットを想起させる演出だ。 スタートから、「Warrior」「Caravan」とノリのいいナンバーが続く。「Caravan」は、ベンチャーズもカバーした超有名曲だが、ドラムのせいか不思議なことにロックテイストを感じた。 大拍手に迎えられた熊谷駿の最初の挨拶はこうだった。前回はジブリナンバーを取り上げたが、今回はディズニーを何曲か演奏すると。後半のMCでは、第一部はスイング系、第二部はフュージョン系で構成したいとも。 3曲目はスタンダードの「Stars Fell on Alabama」で、その後ディズニーものが「Under the Sea」、「A Whole New World」、「Someday My Prince Will Come」(垣本拓海とのデュオ)と三曲続く。第一部のラストは、熊谷駿の作曲による「Original Piece」。弾けるリズムとメロディーで、演歌のこぶしにも似たサックスの音色がホール空間を飛びまわる。左頬からJAZZにめまいの昼下がりBOP CASTLE vol.2菊池雅人(元・ミステリ・クラブ「謎謎」主宰)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る