季刊まちりょくvol.34
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11 ピアノの予選は35分~40分間のリサイタル(独奏)です。プログラムを見ると、どのような音楽を愛し、演奏し、世の中に問おうとしているかがわかります。コンクールなので、次のステージに進むための曲選びという観点はありますが、その方の想いや人となりも見えてくるところが面白いですね。 セミファイナルの課題曲はベートーヴェン*でどちらも名曲ですが、趣きが異なります。コンチェルトの王道の3番、室内楽の要素も大きな4番。どちらを選んでオーケストラと演奏をするか。ソリストとしての側面だけでなく、オーケストラとの対話が見られるか楽しみです。 ファイナルも協奏曲ですが幅広い課題曲から選択します。超絶技巧を披露する方も多く、またその方の音楽との向き合い方も見えてきます。予選からすべて課題曲は前回から変わっていません。よく練られてバランスがとれていて、出場者の能力、魅力、将来性などがわかります。 自分の才能を世の中に問い、音楽家として立つという強い思いのこもった「生の演奏」を聴くのは素晴らしい経験です。演奏の持つエネルギーはとてつもない量なので、受け止める側は疲れますが、国際コンクールに於ける演奏を実際に体験できる機会はそうありません。音楽に向き合っている若者たちの生の音をぜひ浴びてほしいです。 若い新しい才能に出会えるのが楽しみです。このコンクールをきっかけに仙台にゆかりができ、仙台での音楽活動が広がっていく。とても素敵なことです。 「楽器」についても興味が尽きません。今回はスタインウェイ、ヤマハ、カワイの3社がピアノを提供します。各社とも選りすぐりのピアノを準備し、一流の調律師がコンクールの期間中、ピアノのケアをします。各社のピアノはそれぞれに異なった特徴や傾向があり、また同じピアノでも演奏者によって音色が変わります。出場者がどのピアノを選ぶかにも注目したいですし、各社が仕上げたピアノと、一人ひとりの音楽が結びつき、どんな音色が生まれるか。とても楽しみですね。*ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37、ピアノ協奏曲 第4番ト長調 op.58 課題曲については、公式ホームページをご覧ください倉戸テル仙台国際音楽コンクール運営委員会委員/ピアニスト/宮城教育大学教授「生の音をぜひ浴びてほしい」

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