季刊まちりょくvol.33
42/76

40art reviewやんや 前半に演奏された伝統主義的な作品、シュニトケの弦楽四重奏曲第3番とリゲティの弦楽四重奏第1番「夜の変容」。作品の魅力を引き出す演奏かどうかが問われる。今回の演奏は及第点であるのはもちろんのこと、作品の真価を知らしめようという意識が高く、演奏技術、解釈、アンサンブル、今この地で聴く事のできる最高のリアリゼーションを為し遂げた4人(川又明日香、瀧村依里、飯野和英、吉岡知広)に敬意を表したい。 後半はまず大久保雅基「【衝撃】食物連鎖の生態系を作ってみたら…」。この作品は食物連鎖をCGでシミュレーションしたものがスクリーンに映し出される。具体的には草、豚、狼、象を大きさの異なる色分けされた直方体が、正方形の枠の中を蠢きあう。そして捕食や増殖を繰り返す。どの種も滅びる事はないが、個体数は増減を繰り返す。それがパラメーターとして4つの楽器の発音のタイミングや音高に変換され、スクリーンの四隅に指示され、それを見て4人が楽器を鳴らすと言う趣向のものだ。発想自体は面白いと言えるが、音楽としてどうか。生態系は特定の時間においては、密度の濃淡や様々な緊張感を生み出すが、全体を眺めれば平均的で従来音楽の持つ抑揚はない。前半の2曲とは全く異なる(アンコールで演奏された4’33”とある意味同じ側面を持つ)。それを作曲者が意図しているものであるのなら一つの成果となるが、コンピュータではなく人が演奏する意味は?もしくはその命題を提示する作品なのか。 最後に演奏されたライヒの「ディファレント・トレインズ」は、この演奏会の大きな目的であり、快挙だ。ただ、この作品を専らきちんと調整された録音で聴くことが多い我々にとっては、もっと音の渦に飲み込まれたい。そして録音された多層の音響の中から、生演奏の叫びをもっと感じたいと思あたらしい「時」への挑戦第一回 絶頂門脇治(作曲家)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

元のページ  ../index.html#42

このブックを見る