季刊まちりょくvol.31
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67 手記は60人分に絞り、10の章立てで流れをつくり、2018年1月に撮影した4人の消防職員の1時間を超えるインタビューを1人約10分×2本に編集。展示空間には、当時荒浜航空分署で被災したアルミボートを置き(10名以上の屈強な消防署職員のご協力により設置)、オブジェを最小限に留めることで、「心の真実」である手記に記された心情、インタビューで語られる想いを前面に出す内容にまとっていきました。 そして、展示室の壁面上部を絵の具で青空を描いた布製キャンバスで囲み、手記は、最終章タイトル『未来へ』に向かって構成(章ごとのタイトルパネルに描かれる空も次第に青空に)するなど、「展示を見にきてくれた人に、最後は明るい気持ちになって、希望を持って帰ってほしい」という、消防と展示製作に関わる皆の願いを、随所に散りばめました。タイトルの「結ゆい」は、製作チームと消防とが同じ山頂を目指す道しるべのようであったと思います。 開催期間中に7年目の3月11日を迎えたこの企画展を、一緒に創り、応援してくださったすべての方々と、様々な想いを抱いて近隣、市内県内外から交流館に足をお運びいただいたみなさまに、この場を借りて心より感謝申し上げます。最後にまた、チラシ裏面メッセージから−。 あの災害がなければ気づけなかった「何か」という空白に「結ゆい」の一文字が浮かびます。救助の現場で対峙していた命と命。そしてその生存を祈っていた人の命。この三つの命の関係は、距離(世界規模)も、時間(心と噛み合わない)も、様々過ぎて、不安と割り切れない葛藤を抱えながら、自然の猛威のただ中を巡った、三角点のそれぞれでありました。無数のそれらの点こそ「結び目」なのではないでしょうか。文:せんだい3.11メモリアル交流館 石川倫代

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