季刊まちりょくvol.31
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55しい音が聞こえてくる。大きな音なのに、耳を澄ましてしまう。きっと、この音の中にはぼくに聞こえていない音があるんだ。上野の動きにはリズムがある。木や花には生きていることを奏でている間がある。そこにAPE TOPEの音が近づいたり、離れたりして、色をつける。これってなんだろう? 時間を置いてから、このことを考えると、それはぼくたちの生と性、そのものだったような気がする。考えては意味を見つけ、間違えては傷つけたり、傷ついたりを繰り返すぼくたちの生と性。それを否定するのでもなく、簡単に肯定するのでもなく、問いかけ続けること。それが『はないけ』だったのではないか。ぼくみたいななんでも言葉にしてしまう人間からすると、あの日全く言葉がないステージから学んだものは、とても大きなものだったと思う。写真:伊藤トオル〈公演情報〉2018年4月20日(金)、21日(土)会場/能-BOX出演/上野雄次(花道家) APE TOPE〈中里広太、関本欣哉〉(Sound design)

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