季刊まちりょくvol.28
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86art reviewやんや 梅雨空の下、仙台市長選投票日でもある7月23日(日)、カフェモーツアルト・アトリエにて開催されたyumboのライヴは、「まっすぐな道でさみしい」と唄う「さみしい」から幕を開けた。昨年リリースされたアルバム『鬼火』の発売記念ということで、その『鬼火』に収録された楽曲を中心としながら、初期の名曲「九月の歌」や「間違いの実」、また『鬼火』発表以降の新曲「俺にも聞こえる」「悪路」など新旧織り交ぜた全18曲を二部構成+アンコールで披露。第二部では曲によってクラリネット、フルート、ソプラノ&アルトサックス、オーボエを演奏するゲストプレイヤーを迎え、バンド編成の特徴である、呼ブレス吸=響トーンきとなる管楽器群を中心とした重層性を楽曲のすみずみまで息づかせていた。 ここでyumboの詞について触れておきたい。抽象化されたイメージの芳醇な苦さが特徴のyumboの詞は、ある時期(2010年の「馬男」)以降、すべて日本語詞で書かれるようになった。それまでは日本語詞のほかに英語、フランス語、韓国語、ポルトガル語など、楽曲の内容に即した言語で歌詞が書かれていたのだが、そのことを以前バンドのリーダー、ソングライターである澁谷浩次氏に尋ねた際、「日本語で実験したり、新しいものをつくる努力をする時期」(2015年のワンマンライヴ時に配布された『yumbo interview book』より)との応答があった。モチーフとしての具象から抽象を経由し、「歌声」「印刷された文字」という具象へと往還する詞/詩。センテンスを全角アキで区切って縦組みされた『鬼火』の歌詞カードは、一冊の詩集に見える。燃える鬼火、衝突の熱yumbo 『鬼火』リリース・ライヴ 仙台高橋 創一(編集者、ライター)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します撮影:藤野耕太郎

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