季刊まちりょくvol.27
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2 朝9:30。仙台駅のバスプールにサングラス&紺のスプリングコートでさっそうと現れた木村さん。今春38年間務めた仙台市教育委員会を退職されたばかりですが、「ブラタモリ」の出演を機に地図を片手に街をめぐる「まち歩き」の達人として、在職中よりも多忙な日々を過ごされています。 地元の人は乗る機会の少ない「るーぷる仙台」に乗り込み、大崎八幡宮を目指して出発。バスの中では解説は控えると言っていた木村さんでしたが、行く先々で、「米ヶ袋は江戸時代の町割がそのまま残っているんだよね」。「ここが片倉小十郎の屋敷跡」。「大橋の川底には江戸時代の橋脚を建てた柱穴があって、当時の木材が残っているんだよ」と、話が尽きません。 そうこうする間に、目的地の大崎八幡宮に到着。「ブラタモリ」でも紹介された、伊達政宗ゆかりの「四ツ谷用水」の重要ポイントです。「ここは私が大好きな段丘の崖でね」と嬉しそう。風が強い中、木村さんがこれまで調査してきたポイントが落とし込まれた地図を握りしめ「四ツ谷用水」の痕跡を探して行きつ戻りつ。素人目には、ただの狭い道にしか見えないのですが、木村さんの解説を聞くと、たちまち江戸時代の町並みが立ちあがってくるから不思議です。 「自然の沢(へくり沢)と人工の用水(四ツ谷用水)がここでクロスします。暗あんきょ渠※の立体交差。こんなところ他にないですよ」。木村さんのことばの端々には、伊達政宗はじめ、当時の工人達への尊敬の念が感じられるのでした。 塩竈に育った木村さんは、当時から地図が好きな少年だったそうです。長じて仙台市教育委員会文化財課に勤めることになり、その頃登録されていた市内の遺跡428か所を、市民の方からの質問に備え、休日返上で地図を片手に全現場を回った経歴の持ち主。「ブラキムラ」の原点はここにありました。 郡山遺跡の発掘や、富沢遺跡保存館(地底の森ミュージアム)の建設など、様々な仕事をされてきた木村さんですが、「一番好きなのは古代遺跡の発掘かなぁ」。手がかりを一つ、二つ見つけ、それを復元していく過程がとても楽しかったとのこと。発掘で見つけた土器は、昔の人が食事「四ツ谷用水」の痕跡をたどる「まち歩き」は大崎八幡宮がスタート地点。その時の参加者の顔ぶれや、時間によって、終点はまちまちに。※暗渠(あんきょ)地下に埋設したり、ふたをかけたりした水路。

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