季刊まちりょくvol.25
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2 佐藤通雅さんが青葉区錦ヶ丘に住みはじめたのは、今から20年前のこと。その頃は宅地開発が始まってまだ日が浅く、「原野に住むつもりで来た」のだという。それが、「どんどん家が建って驚いているんです。今も造成中のところがいっぱいありますよ」。丘陵に沿って真新しい家が建ち並ぶ町を車で通り抜け、今日の目的地である月山池・サイカチ沼を目指す。 住宅街から細い道に入るとすぐに森が広がっていた。ところどころに「熊出没注意」の看板が設置されている。クマ除けの鈴は付けてきたものの不安がっていると、「もともとクマの家に人間が来ているのだから、クマにも言い分があるんですよ」と佐藤さん。 木々の間を1.5kmほど進むと池が見えてきた。手前が月山池、奥に広がるのがサイカチ沼。どちらも大正から昭和の初期に灌かんがい漑用に造られた溜め池だ。最近は釣りの名所として広く知られるようになり、週末になると多くの釣り人で賑わうという。 駐車場で車を降り、池のそばまで歩く。「ここはね、仙台では思いがけなくいいところなんです」と佐藤さんが言う。「錦ヶ丘に引っ越す前にここを見に来て、それでこの近くで暮らしたいなあと思ったんですよ」。以来、このあたりはお気に入りの散策コースだ。1日の多くの時間を短歌の創作や評論などの執筆にあてる佐藤さんだが、「ずっと家にこもって原稿を書いてい月山池とサイカチ沼を一周するといいハイキングになる。以前は自宅から歩いて来ていたが、近頃はクマの問題もあり、なかなか頻繁には来られないのが残念だという。

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