季刊まちりょくvol.25
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震災復興の過程の中で 田澤 紘子(せんだい3.11メモリアル交流館)「伝える」~常設展・企画展 11 せんだい3.11メモリアル交流館には、大きく分けて二つの目的があります。一つは、仙台市初の震災メモリアル施設として、東日本大震災の経験や記憶を後世に伝えること。そしてもう一つは、仙台東部エリアの豊かな地域資源を積極的に発信し、それらを踏まえた上で地域再生への力を形成していく場として機能することです。2階の展示室内の「常設展」と「企画展」では、こうした目的を踏まえた展示を行っています。 メモリアル交流館は2015年12月の地下鉄東西線の開業に合わせてプレオープンし、2016年2月に全館開館しました。その後、私は4月からこちらに勤務することになりました。そして、さまざまな方たちが来館してくださっている様子を目の当たりにしてきました。 例えば、同じ「仙台市民」でも、東部エリアにお住まいだった方と、泉区にお住まいだった方では、震災当時の状況は「一緒」とは言い難い面があります。ただ、当時の大変な混乱の中でお互いの状況を知ることが許されなかったこともあり、常設展において時系列で掲示してある「その時の仙台の様子」をじっくりご覧いただくにつれ、「自分とは違う大変さがあったんだ」ということで改めて当時を振り返る機会になっていただいているように思います。 また、遠方から来館された方々は震災後の光景しかご覧になっていない場合がほとんどです。そういった方々には、展示をとおして震災で被害を受けた地域の困難さだけではなく、地域固有の歴史や生活文化についても伝えるようにしています。「目の前に広がるのは被災地ではなく、暮らしがあった場所なのだ」と認識していただくだけで、今後の復興や地域を見つめる眼差しも変わっていくように思っています。 メモリアル交流館にいると、まさに震災復興の過程を肌で感じる場面が多々あります。所在地である荒井駅のまわりには新しい建物が次々と建ち、来館される皆様が語られることもさまざまです。メモリアル交流館のスタッフとして、「震災からの時間の中で、今ここで起きていること・感じていること」をしっかりと受け止め、展示やプログラムをとおして伝えていきたいと思っています。

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