季刊まちりょくvol.24
18/96

 Art Revival Connection TOHOKU(アルクト)は、2011年3月11日の東日本大震災を契機に始まった芸術家たちによる復興支援活動です。当時、あのような有事の際、どのように振る舞ってよいか解らなかったこの活動は、5年の時を経てもなお確実に継続(現在はARCTと改称)されています。地元の子供たちのもとへ芸術家たちが出向き、芸術体験を通じて地域の復興に資する「文化芸術による子供の育成事業-芸術家の派遣事業-〈東日本大震災復興支援対応〉」(文化庁委託事業) はその代表例で、初年度より民間のアートコーディネイト団体と自治体、市民文化事業団との協働により実施が続いています。震災後の5年間を共に歩んできて感じることは、それぞれの役割、得意なスキルを持ち寄り協働する重要性です。クオリティや継続性の担保などアートプロジェクトに付き纏う多くの課題を、様々な立場や知恵で一つずつ乗り越えていくのは、大きな力であり、喜びです。 特に、教育の現場は私たち芸術家にとって重要な場所であると同時に、とても入りづらい、関わりを持つことが難しい場所でした。実行委員会形式で行われている本事業はその垣根を越えていける取り組みであり、私たちにとっては心強いモノでした。比較的閉鎖的な創作活動になりがちな芸術家たちにとって、市民文化事業団や行政、他のコーディネイト団体との協働は、大きな視点を持ち続けるための助けになっています。 東北での震災から5年が経過した今年、九州は熊本で大きな地震がありました。仙台や東北とはまた違う状況ではあるものの、この土地にも地域で舞台芸術を志す仲間が居ました。Art Revival Connection TOHOKU(やARCT)で培った経験や知恵、失敗談やノウハウを共有することは私たちの使命だと感じています。東北には東北の、九州には九州の道があります。同じ国内で起きたこの災事に、知恵と経験をもって立ち向かえるよう、官民協働の体制を築けていけないだろうか?と日々考えています。 市民文化事業団設立から現在までの30年が、これからの10年後、30年後、50年後に繋がっていきますように。震災後、大きな変化を迎えたこの土地で、立場や役割を越えた協働が継続していくことを期待します。16支えしている点が特徴的だという。高齢化が進むと、どのミュージアムでもシニア世代の知的アミューズメント空間としての文化的福祉機能が注目されるようになるだろう。一方で、子どもたちや若年層は30年後のミュージアムの大切なサポーターである。近未来の人口減少社会では、入館者数にとらわれずに来館者の満足度を高めるサステナブルな成長戦略が求められる。将来を見据えつつ、各館の学芸員には幅広い年齢層の好奇心をゆさぶるミュージアムづくりにじっくり取り組んでほしい。そして、市民文化事業団にはそのための着実な環境醸成を期待したい。東日本大震災後の東北を、芸術家と共に歩む鈴木 拓(株式会社boxes代表、企画・制作)仙台市出身。2011年、文化による復興支援組織ArtRevivalConnectionTOHOKU事務局長。翌年boxes Inc.を設立、同代表。ARCT理事、杜の都の演劇祭プロデューサー、舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)副理事長。

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る