季刊まちりょくvol.23
15/88

13 ステージマネージャー Stage Manager大おおくぼ久保 斉さいぞう象さん高校生までジュニアオーケストラでヴァイオリンを弾いていた大久保さん。しかし演奏家ではなく、舞台道具関係の仕事に就きたいと思っていたそう。学生時代に仙台フィルでアルバイトをしたのがきっかけでこの道に入りました。 「ステージマネージャー」(略してステマネ)は、オーケストラの舞台に関わることすべてが仕事です。 曲目によって楽団で所有していない特殊楽器を使う場合、プロ向けのレンタル楽器店や他のオーケストラから借りる算段をしたり、ピアノの独奏が入る場合などは調律の手配などを担当します。 演奏会で使う物は基本的に現地調達しないので、使用する楽器や備品はすべて会場に運搬します。4tトラック1台から2台の分量になりますが、そのトラックの手配もステマネが行います。 リハーサルや本番では、ステージ上の椅子や譜面台の位置を決めて並べたり、平台(舞台に高さを出すための台)を組んだり、必要な場合は照明の調整をしたりと、セッティング全般を行います。 現在はアシスタントと一緒にチームで仕事をしています。会場に一番最初に来て、一番最後に帰るのがステージマネージャーです。 印象に残っているのは2013年のロシア公演。楽器は美術品扱いなので、通関の手続きのために事前に詳細な書類を作り(英語とロシア語で作成し、楽器の写真も添付する)、現地に一足先に飛んで通関審査に立ち会って……。海外公演はもうやりたくない(笑)、と思うぐらい大変でした。 海外だとホールも古い建物が多いので、トラックが横付けできる搬入口やエレベーターがなく、大きな楽器を3、4階まで手運びしたことも。モスクワとサンクトペテルブルクのホールでは、ステージが傾斜していて(手前より奥のほうが高くなっている)、びっくりしました。「平台が欲しい」と言っても「何だそれ?」って。ロシアには平台がないんですね。ホールも備品も仕様が日本と全然違っていて、現場で戸惑うことが多かったです。どんな仕事?仕事でのエピソード お聞きしたのはお仕事のごく一部。楽団員が演奏に専念できるのも、裏方の皆さんの存在と万全な仕事があるからこそ。コンサートに行った際は、舞台裏を想像しながら演奏を聴いてみると、より深みが増すのではないでしょうか。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る