季刊まちりょくvol.23
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12 インスペクター Inspector我わがつま妻 雅まさたか崇さんバンドのヴォーカルやミュージカル出演の経験もある我妻さんは、大学時代に仙台フィルでアルバイトをしていました。卒業後は営業職に就いたものの、5年後のある日、仙台フィルから声をかけられて再び楽団の仕事に。 「インスペクター」(略してインペク)の仕事は、雑用全部というか、舞台に乗る人間(楽団員、指揮者、ソリスト、合唱団、その他)全員のマネージャー業務です。演奏家が気持ちよく舞台に上がれるようにお世話をするというのが仕事です。 スケジュールの提示、曲目が決まってエキストラが必要な場合は人員の手配、指揮者やソリストのホテルの手配・送迎、リハーサルの段取り、事務所と楽団員との連絡(配布物や連絡事項の周知など)、楽団員オーディションの運営、などなど。「健康診断どうなってるの?」でも何でも、楽団員はわからないことがあれば私に聞いてきますから、つねに話しかけやすい雰囲気を作るように心がけています。 他のオーケストラだと、インペクは楽団員が兼ねているところも多く、軽微な業務が主です。専任のインペクがいて、ここまで業務を担当しているのは仙台フィルぐらいじゃないでしょうか。インペク、ライブラリアン、ステマネ(次頁)は裏方として常に情報を共有しています。裏方の仕事だけで本が一冊書けるぐらいです(笑)。 仙台フィルは冬になるとなぜか北海道や青森、秋田など北のほうに演奏会に行くことが多いんです。大雪なんか降ると、飛行機が降りられないとか、電車が止まるとか、移動途中でハプニングが起きる。でもどうしても何時までにここに行かなきゃいけないからと、車掌さんに頼み込んで楽団員たちを電車から梯子で降ろさせてもらい、手配したタクシーに乗せ、何とか演奏会に間に合わせたこともありました。そんなことがあるので、ふだんの生活でも常に先々のことを予想して動くようになってしまいました(笑)。 海外から指揮者やソリストを招いたとき、日本のお土産を買いたいと言われるのですが、ある人が「浴衣、甚平がほしい」と。それで季節外れの浴衣を探して、一緒に街を歩き回ったこともあります。音楽家が急病になって、付き添いとして救急車に乗って病院に行ったことも何度か……。まるで「オーケストラのお母さん」のような仕事と言ってもいいと思います(笑)。どんな仕事?仕事でのエピソード

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