季刊まちりょくvol.23
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11 ライブラリアン Librarian水みずの野 広ひろあき明さん音楽大学でトロンボーンを学んだ後、楽器店勤務を経て再度大学院に入り直した経歴をもつ水野さん。ファゴット奏者であるお兄さんが仙台フィルの団員という関係もあって、ライブラリアンとして仙台フィルへ。 「ライブラリアン」とは図書館の司書のことですが、オーケストラでライブラリアンというと、オーケストラに関わる楽譜の管理をすべて担当します。  演奏会の曲目が決まると、その楽譜を楽団ですでに持っているかどうかを確認し、持っていない場合は購入するか代理店からレンタルします。楽譜といっても、例えば、ベートーヴェンの「運命」であれば出版社の違いなどによって3種類ぐらいあるので、そのうちのどれを使うかを指揮者に聞いたりして決めます。演奏会の2~3ヵ月前には楽譜が手元に来るようにするのですが、実は楽譜にはミスプリントが非常に多くて、私がスコア(指揮者用の総譜)とパート譜を見比べて1音ずつ照合します。面倒な作業ですが、チェックしておかないと、リハーサルで混乱して時間のロスになってしまうんです。その他、弦楽器のボウイング(弓の使い方)の指示を楽譜に書き込む作業などもします。筆記用具にもこだわりがあり、製図用のシャープペンを使用しています。そのようにして、演奏会の1ヵ月前には楽団員が楽譜を持ち出せるように整えておきます。 演奏中、楽譜をめくるロスがないように「めくり」という加工(演奏の区切りに合わせて次に続く一定部分をコピーして貼っておく)をすることがあるのですが、リハーサルしてくうちに指揮者が指示を変えていくと、その「めくり」が無効になってしまうことがあります。そんなときは楽譜をいったん回収して作り直すのですが、時間がない中でやらなきゃいけないときはキツイですね。 団員のなかには演奏会当日に楽譜を忘れてくる人がいて、本人から家の鍵を預かって私が取りに行ったりしたなんていうこともありました(笑)。 ライブラリアンに重要なのは経験と性格。細かい仕事ですが、真面目なだけではダメで、楽譜に関する楽団員からのさまざまな要望に上手に答える術すべが必要。あくまでも裏方に徹し、舞台には一歩たりとも出たくないのですが、舞台転換で出ちゃっています。拍手を羨ましいと思うような人は、裏方にはならないほうがいいでしょうね(笑)。どんな仕事?仕事でのエピソード

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