季刊まちりょくvol.22
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2 暖冬とはいえ冷え込んだ1月の朝。約束の場所にうかがうと、羽織袴にショールをまとった津村さんが姿をあらわした。その凛とした佇まいに、一瞬にして空気が引き締まる。しかし津村さんが「おはようございます」と破顔一笑した途端、ぱっと陽が射したかようなあたたかさが広がった。その温ぬくみとともに、本日の目的地、青葉区の小松島へ向かう。 小松島の坂道を登る途中で、「懐かしいですね、この道は。冬は凍結すると大変なんですよ」と津村さん。かつて小松島には津村さんの師匠の代からの弟子だった笛ふえ芳子さん所有の能舞台があり、津村さんは月に一度、稽古を付けに東京から通っていた。津村さんが仙台で教え始めたのは今から40年近く前。その頃はまだ東北新幹線が開業しておらず、「『特急ひばり』で、仙小松島にて。この坂道を登った先に「小松島能舞台」があった。お弟子さんたちも息を切らせながら稽古に通った道。笛さんの甥・高田さんご夫妻と。2011年、「能-BOX」の開館イベントで会って以来の再会。「いろいろお世話になっているんですよ。一緒にカラオケに行ったりね(笑)」と津村さん。

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