季刊まちりょくvol.21
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6※それぞれの見出しは宮沢賢治「農民芸術概論綱要」 の言葉を引用しています。  東北農民管弦楽団は2013年1月に結成されたアマチュアオーケストラ(アマオケ)です。現在、東北地方の農家、農学部の学生、農協職員、農業関係企業の会社員、農産物の販売業など、何らかの形で農業に携わる人々約80人が団員登録をしています。年間通して活動している“ふつうのアマオケ”とは異なり、この楽団が活動するのは冬場の農閑期。稲刈りが一段落して木の葉が色づく頃になると、団員たちは岩手県花巻市に集まり、定期演奏会に向けての練習をスタートさせます。「秋の実りと音楽に感謝」とでもいうような一枚。なんて豊かな光景でしょう。これぞ農民オケ! 花巻出身の詩人・童話作家、宮沢賢治が著した「農民芸術概論綱要」をご存じでしょうか? 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という部分が有名なこの文章には、レコードを収集して周囲の人に聞かせたり、自身もチェロを演奏するなどクラシック音楽にも造詣が深かった賢治の芸術観が表れています(P.15~P.17参照)。 東北農民管弦楽団は、賢治のこの「農民芸術概論綱要」に共感する人々が集まってできたオーケストラです。「東北の農業関係者が、音楽をはじめとする芸術活動に取り組むことにより、生活文化の向上をはかる」、また「農業を主産業とする地域での活動を通して、住民との交流と相互理解を深める」といった楽団が目指すところには、賢治の精神が息づいています。2015年3月、花巻市での第2回定期演奏会。「おれたちはみな農民である」「芸術をもてあの灰色の労働を燃せ」

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