季刊まちりょくvol.21
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11この日の練習のために朝6時に青森の家を出たという白取さん。楽団員によると、白取さんの農業と音楽に対する熱い思いに共感して入団する人も多いそうだ。※2 陸羽132号=1921(大正10)年、秋田県の試験場で日本で初めて人工交配の育種法によって作られた米。冷害に   強い特長をもち、当時の東北で広く栽培された。宮沢賢治もこの品種の普及に取り組み、詩にもうたっている。◎苦労されるところは? メンバーと練習時間の確保ですかね。ふだんの練習は花巻ですが、(楽団員が東北各地に散らばっていて)遠いので、しかもこれから冬になって雪が降るとなかなか集まることができません。全員が揃うのはどうしても演奏会の前日ぐらいになります。 これから毎年、東北各地で順番に演奏会をしていきたいと考えているので、各県から均等にメンバーが揃うといいなと思っています。福島と秋田の方が少ないので、そのあたりの方も入ってくれるといいですね。◎2月の仙台での演奏会では、舘野泉さん親子との 共演で世界初演の曲を演奏しますね。 チェロ奏者でもある舘野英司さん(2月の演奏会で指揮を担当)から、お兄さんの舘野泉さんが宮沢賢治関連の曲で共演してくれる東北のオーケストラを探しているのだが、興味ないか? と聞かれて、「興味はあります」と答えたところ、そのままOKととられたようで(笑)。その後に楽譜が届いて、それを見てびっくりしちゃいまして。これは我々にはできないかもしれないと思い、舘野泉さんにお会いして「うちの実力はこんなものなんですけど……」とお伝えしたところ、「いいんです、いいんです。大丈夫ですよ!」と。英司さんにも相談したのですが、すごく温かいお言葉をいただいて、「じゃあ、やってみよう」ということになりました。◎仙台での演奏会に向けてひとことお願いします。 仙台は東北の中枢都市で、いろいろなプロの音楽家も演奏会に来ますし、仙台のクラシック音楽ファンは耳が肥えていると思います。そのようなところで演奏するのはプレッシャーがあります。 うちのオケは今まで都市部から外れたところで演奏をしてきて、アンケートの結果を見ても、初めてオーケストラを聴くという方や、クラシック音楽ファンというよりは宮沢賢治ファンという方も多いんです。そこがふつうのオーケストラとはかなり違うんですよ。2月の演奏会も、そういう方たちにぜひ来ていただきたいと思っています。純粋に上手な演奏を聴きたいのであれば他にたくさん団体があるでしょうから、農民オケらしい演奏ができれば……。 あと演奏会当日、会場では楽団員が持ち寄った農産物を販売します。私はじゃがいものほかに、宮沢賢治ゆかりのお米「陸りくう羽132号(※2)」を販売する予定です。買っていただけたら嬉しいです(笑)。

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