季刊まちりょくvol.21
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10 楽団の代表を務める白取克之さんは、小学生のときに「農民になる」と決意し、現在その夢を実現して青森県弘前市の岩木山麓で農業を営んでいます。子どもの頃からの宮沢賢治ファンでもあり、「賢治がやっていたことは何でもやってみたい」との思いからチェロを始めたという白取さんに、農業と音楽についてのお話をうかがいました。◎ご出身はどちらですか? 青森です。家はふつうのサラリーマン家庭でしたが、宮沢賢治の影響を受けて農業を志し、山形大学の農学部に学びました。関西や埼玉、北海道で農業研修をした後、青森に戻ってきました。学生時代は大学のオーケストラで活動し、そのほかに農学部だけでオケを作ったりもしていました。◎現在、岩木山のふもとで農業をされていますが、 農場を開拓するところから始められたとか? そうです。妻の実家が開拓酪農家だったんですよ。なので、開拓の技術を教わって。今は少量多品目で野菜全般とお米を作っています。◎東北農民管弦楽団を結成したきっかけについて教えてください。 北海道に「北海道農民管弦楽団(※1)」というアマチュアオーケストラがあります。私が北海道で農業実習をしているとき、楽団の代表の牧野時夫さんと知り合い、演奏会にも2回ほど出させてもらいました。その後私は青森に戻って就農したのですが、最初はなかなか楽器に触る時間がありませんでした。ようやく農業が軌道に乗って余裕が出てきたとき、また農民オーケストラに参加したいと思いましたが、北海道まで練習に行くのは大変なので、東北にも同じような農民オケがあったらいいなと思い、牧野さんに相談しました。 そうしたら、2013年1月に北海道農民管弦楽団が花巻で演奏会をするということで、それに合わせて東北でも農民オケを立ち上げて一緒に演奏しませんか、と言われまして。それで知り合いに呼びかけたり、東北にある大学の農学部に行って勧誘活動をしたりしてメンバーを集めました。◎東北農民管弦楽団の特徴はどんなところですか? 楽団員に農業関係のいろいろなジャンルの人がいるので、情報交換ができることです。大学の先生とか試験場の職員の方もいますし、最新の技術のことも聞けるので、実際に農作業をする上ですごく助かっています。※1 北海道農民管弦楽団=1994年創設。北海道の農家・農業関係の仕事に従事する音楽愛好家が集まり、道内各地で演奏会などの活動を行っている。2011年にはデンマークで、東日本大震災後には岩手県花巻市、陸前高田市でも公演を実施した。これまでにホクレン夢大賞(農業応援部門)、第15回北海道地域文化奨励特別賞、ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞、農民文化賞などを受賞。代表者は余市町で有機農園を営む牧野時夫氏。⇒P.8から続く

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