季刊まちりょくvol.19
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2 4月下旬の日曜日。最初に向かったのは、とよたさんが高校卒業までを過ごした青葉区宮町。自宅があったあたりで、とよたさんが1枚の写真を取り出した。そこに写っていたのは、自転車にまたがった仙台二高生の頃のとよたさん。今回は、この頃と同じように通学路をたどってみたいとのことで、自転車に乗っていざ出発! 天気は快晴、絶好のサイクリング日和。春風を受け、ペダルも軽やかに宮町から定禅寺通へ向かう。その途中、「このあたりに『錦映画館』っていう映画館があって、5、6歳の頃、母親によく連れて行かれたんだよ」と、とよたさんが立ち止まった。「あるとき、上映途中で入場したら母親がすぐスクリーンに釘付けになっちゃって。暗いから席がわからなくて、他人の膝の上に座っちゃったんだよ(笑)。子ども心に非常に恥ずかしかったね」と笑うとよたさん。映画が一大娯楽だった時代の、なんとも微笑ましいエピソードである。 さて、高校生になったとよた少年は、雨の日も雪の日も、二高までの道を自転車で通っていた。「朝の連続テレビ小説を見終わってから自転車すっ飛ばしてね。それで間に合ってた」というから、市電を追い抜くほどのスピードである(上部に掲載の、とよたさんによるイラスト参照)。そのためか、定禅寺通では「当時、ここがどんな様子だったか覚えていない。風景はあんまり見ていなかったんだね」。ケヤキ並木を颯爽と走り抜け、西公園を目指す。 西公園にはかつて仙台市天文台が設置され、多くの市民に親しまれた。小学校で天文クラブに入っていたとよた少年も、よく訪れていたそうだ。思い出を聞いてみると、「6年生のとき、夜空の観察会か何かに参加しようと思って夜遅くにうろうろしてたら、おまわりさんに補導されてさあ」との発言が飛び出した。当時とよたさんの家には電話がなく、お隣さんに交番からの連毎日自転車で通学していた高校時代(右)と同じポーズを決めるとよたさん。

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