季刊まちりょくvol.19
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18 「せんくら10周年」おめでとうございます。「楽都」を標榜する仙台にこのクラシックフェスティバルが定着したのは、嬉しいことですね。1つのステージは45分、チケット1,000円を基本として、質の高いコンサートを提供しようという関係者のご努力が、「せんくら」の10年を築いてきたと思います。今年のラインアップ発表を心待ちにしているファンも多いのではないでしょうか。 「せんくらのこれから」について、私が個人的に望むことはふたつあります。ひとつは、「せんくらに来なければ聴けない、せんくらならではの企画」です。世界を舞台に活躍する演奏家が来仙してくださり、その素晴らしい演奏に触れることができるのは、「せんくら」の大きな魅力です。ただ、それらを受け取るプログラムだけでは、文化創造には繋がりません。地元発のユニークな企画は、これまでもいくつか組み込まれていますが、もっと積極的に取り入れることを望みますし、来仙する演奏家の方々にも、「せんくらでしか出来ない企画」を持ってきて頂けたらと思います。当然、演奏家側にも運営側にも仕込み、つまり準備の手間がかかりますが、その手間こそが文化創造への一歩です。 もうひとつは、「一般参加枠」の拡大です。街なかコンサートや駅コンサートといった、一般の参加枠を設けているのは、とても素敵なことですね。日頃本格的に、あるいは楽しみでクラシック音楽を演奏している方々はたくさんいます。そういった方々のための自由な演奏発表の場を、「せんくら」関連企画として多く設しつらえることができれば、クラシック音楽はもっと身近なものになるでしょう。 仙台には「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」があります。「せんくら」でも、あのような比類のない賑わいを創出できれば、「仙台国際音楽コンクール」の素晴らしさも、「楽都・仙台」という語も、より多くの人々にリアリティと誇りを持ってもらうことができるのではないでしょうか。吉川 和夫 きっかわ かずお作曲家。東京藝術大学大学院修了。室内楽曲、室内オペラ、合唱劇などを中心に作曲活動を展開。CDは作品集『魂の行方』(フォンテック)など。作曲家グループ「緋国民楽派」同人。宮城教育大学教授。「被災地へピアノをとどける会」の活動にも取り組んでいる。せんくら10周年に寄せて寄稿吉川 和夫(作曲家)©姫田蘭

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