季刊まちりょくvol.17
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41947年宮城県岩ヶ崎町(現・栗原市)生まれ。父親の影響で10代から俳句を作り始め、俳人・阿部みどり女、金子兜とうた太の教えを受ける。古川工業高校卒業後、神奈川で地方公務員として働きながら國學院大學文学部夜間部に学ぶ。大学卒業後は仙台で中学校の国語教員となり、その傍ら句作を続け、塩竈の俳人・佐藤鬼房が主宰する結社「小熊座」に参加。1994年、宮城県芸術選奨、現代俳句協会賞を受賞。2002年、「小熊座」の主宰を引き継ぐ。2014年、第五句集『萬の翅』にて読売文学賞、小野市(兵庫県)詩歌文学賞、蛇笏賞の3つの賞を受賞。現在、現代俳句協会副会長、「河北新報」俳壇選者などを務める。おもな著書に、句集『雲ひばり雀の血』『蟲むしの王』、『NHK俳句 大人のための俳句鑑賞読本 時代を生きた名句』などがある。多賀城市在住。高野 ムツオ たかの むつお そんな風景を見ているとさまざまな思いが浮かぶが、それを言葉にすることはむずかしい。そうしてみると、わずか17音からなる俳句という言語芸術のなんと深遠なことか。 「俳句は短い形式だけれども、今あったことを取っておいて後で作ることはできない。自分がそのときに受けたショックであれ感動であれ悲しみであれ喜びであれ、それをその場で五七五に捉えることによっ2013年3月、詩人の高橋睦むつお郎さんを案内して蒲生に立ち寄った際、高野さんはその時期には少し早いヒバリの鳴き声を聞いたという。「震災後、このへんにはヒバリはいなかったんじゃないか。でもその声を聞いて、ああ、戻ってきたんだと思いました」て、そのときの思いが言葉のなかに永遠化されるんです」。そうやって生まれた一句が、長い物語をも凌駕する力をもつのだろう。  泥かぶるたびに角つのぐ組み光る蘆  春、泥のなかで芽を吹く蘆は、再生と希望の象徴だ。この高野さんの句を心に留め、目の前の枯れ野がかがやく季節を思い描いてみる。

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