季刊まちりょくvol.14
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『仙臺郷土句帖』を発行した天江富彌は、大正期に童謡詩人のスズキヘキらとともに仙台の児童文化運動を担った人物です。文学者や芸術家との交友も広く、自身も多才な文化人であり、何より郷土への深い愛情をもっていました。 太平洋戦争中、戦地にいる兵士たちにふるさとの言葉を届けたい。しかし物資不足の戦時下のこと、紙面を節約しつつ郷土の風物を多く盛り込むには短い句の形式がいい、という天江の発案により生まれたのが『仙臺郷土句帖』だったのです。天江 富彌(あまえ・とみや)1899(明治32)年~1984(昭和59)年仙台の造り酒屋(天賞酒造)に生まれる。若い頃から文芸に興味を持ち、童謡を作る。1921(大正10)年、友人・スズキヘキらと童謡専門誌『おてんとさん』を創刊。昭和の初めに上京、酒場「勘兵衛酒屋」を開店し、詩人・彫刻家の高村光太郎や板画家の棟方志功など多くの文化人が集った。のち仙台に戻り、戦後は郷土酒亭「炉ばた」の店主(おんちゃん)として親しまれた。竹久夢二の絵やこけしの蒐集家としても知られている。昭和56年度「河北文化賞」受賞(受賞理由は「児童文化の育成と郷土史研究に貢献」)。(写真協力:仙台文学館)『仙臺郷土句帖』の生みの親、天あまえ江富とみや彌6『仙臺郷土句帖』の生みの親、天あまえ江富とみや彌『仙臺郷土句帖』原本(鈴木楫吉氏蔵)。紙の種類、体裁は輯によってそれぞれ。表紙は当時活躍していた版画家・洋画家・日本画家が手がけています。

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