季刊まちりょくvol.14
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特集145翻刻『仙臺郷土句帖』 翻刻・略解 渡邊愼也 2013年11月発行郷土句に詠み込まれた方言や当時の用語は、現在では難解なものが多いため、後半部分には渡邊さんによる「略解」が付けられています。仙台市内の書店・金港堂などで取り扱い中(定価1,800円+税)。 『仙臺郷土句帖』をご存じですか? 『仙臺郷土句帖』は、仙台の文化人であり酒亭「炉ばた」の主人として親しまれた故・天あまえとみや江富彌(1899年~1984年)が、1941年、戦地に赴いている郷土出身の兵士の慰問のために発行しはじめた印刷物です。終戦後の1946年まで全部で14輯しゅうが出されました(※)。 同書に掲載されているのは、仙台・宮城ゆかりの文化人たちがふるさとの言葉で詠んだ1250余句。当時の暮らしや人々の姿がありのままにうたわれた句の数々は、仙台弁を耳にすることが少なくなった今日、郷土の文化・民俗・歴史などをたどる上で貴重な資料であると言えます。しかし残念ながら、同書の原本はそのほとんどが散逸し、これまで多くの人の目に触れることはありませんでした。 その『仙臺郷土句帖』が、2013年11月、市内在住の出版文化研究家・渡邊愼也さんの手によって「翻刻」(写真製版により再刊すること)の形で刊行されました。約70年前の仙台の言葉、人々のふるさとへの思いが、現代に甦ったのです。 温もりに満ちた詩情豊かな「郷土句」は、今を生きる仙台人にも何かを語りかけるはず。その世界を、ごいっしょに訪ねてみましょう。※その後、復刊『仙台郷土句帖』が2001年、38号まで発行されています。 郷土句でなければ表現出来ぬ領域がある筈だと思うのです。俳句の様な侘びや深さと別に、そして川柳の様な風刺も必要としない、それでいて方言の使駆によってのみ表現出来る懐郷と思母と心にしみ通る民族の暖かみを感得する新しい句の境地でもあります。――天江富彌「郷土句ということ」(復刊された『仙台郷土句帖』38号より)翻刻『仙臺郷土句帖』~よみがえる「郷土句」の世界~

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