季刊まちりょくvol.14
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22art reviewやんや 仙台で最も伝統のある合唱団の一つ仙台宗教音楽合唱団が、第35回の記念演奏会に取り上げたのは、ブラームスの難曲にして傑作である「ドイツ・レクイエム」。バッハのスペシャリストとしての印象が強い同合唱団がロマン派の音楽をどう処理するのか期待を込めて会場に向かった。共演は同じ方向性を持つ同胞の盛岡バッハ・カンタータ・フェライン。100人を超える合唱からは圧倒的なエネルギーを感じることができた。 ブラームスの前に、まずドイツ音楽の父と言われるシュッツの宗教的合唱曲集から3曲。特に印象的だったのは、ドイツ語の語感(殊に強弱)や個々の単語の意味を重視した表現だ。ドイツバロック音楽の力強さと奥深さをよく引き出していて感心した。多少誇張しすぎと思われる表現も、全体を通すと良いアクセントになって、曲が平板に何の印象もなく過ぎてゆくのを防いでくれ、しまりのある演奏になっていたと思う。 続いて、シュッツの100年後に生まれたバッハのカンタータ第68番より終曲の合唱も同じコンセプトに基づいてよくしまった演奏を繰り広げた。ただ、オーケストラをピアノで代用するのは少しつらい。妙な違和感がどうしてもぬぐい去れないのだ。 休憩後、ついにメインの「ドイツ・レクイエム」。驚くべきは、この指揮者と合唱団は事実ロマン派であるブラームスを、バロック的な演奏で聴かせたのだ。もちろんブラームスは古典に回帰するような作風ではあるが、ベートーヴェンなどの古典派への回帰であり、バロックまで戻るというのは議論の余地があるだろう。もちろん演奏は立派である。よくこれだけの人数を統一してまとめたものだと思う。地道で緻密なドイツ語の持つ力強さが十全に伝わってきた演奏仙台宗教音楽合唱団 第35回演奏会J.ブラームス ドイツ・レクイエム Op.45 ~ピアノ2台の伴奏による~石川 浩(作曲家・指揮者)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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