季刊まちりょくvol.14
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21<イベントピックアップ>仙台文学館 開館15周年記念特別展「石川啄木の世界~うたの原郷をたずねて」�4月26日(土)~6月29日(日) 没後100年を経てもなお、私たちの心を打つ石川啄木のうた。貧困と病苦にさいなまれた26年の生涯と、人々を惹きつけてやまない作品の数々を紹介します。展示では、直筆資料や遺愛の品をはじめ、初代館長 井上ひさしの戯曲「泣き虫なまいき石川啄木」の資料もご覧いただきます。胸に迫る啄木作品の魅力をぜひ味わってください。☞P.19〜P.20「ミュージアムの催し」の情報をご覧ください。仙台市市民文化事業団主催・関連事業のお知らせ石川啄木 歌人・詩人。1886(明治19)年、岩手県日戸村(現・盛岡市玉山区)生まれ。10代の頃から詩や短歌を作り、のちに詩集『あこがれ』、歌集『一握の砂』を出版。1912(明治45)年、26歳で肺結核により死去。没後、歌集『悲しき玩具』が刊行された。◆展示の見どころ ~井上ひさしの啄木 「啄木の歌が日本人の心の索引になっている」という言葉を残している井上ひさし。その井上が、啄木の母・カツと妻・節子ら家族の葛藤、友人・金田一京助との交流を描いた戯曲「泣き虫なまいき石川啄木」の創作資料(啄木年譜、創作メモ、原稿)などを展示します。◆宮城とのゆかり 啄木は何度か宮城を訪れています。仙台の詩人・土井晩翠のもとを訪ねて新聞に訪問記を連載したり、石巻の荻浜に立ち寄って束の間の春を楽しんだことも。写真は、その荻浜に建てられている歌碑。東日本大震災の津波にあいながらも流失を免れ、啄木と宮城とのゆかりを伝え続けています。◆�啄木展によせて うたの原郷をたずねて 小池 光 (歌人・仙台文学館館長) 人はかなしみの時、失意の時、この世の居場所を失ってしまったかに思える時、こころのなかに「うた」を求める。「うた」はひととき人を慰め、やさしく包み、そして明日に生きてゆく力を与える。むかしも人はそうして生きてきたし、今も生き、これからも生きてゆく。啄木は、まさにそういう「うた」の近代における直接の原郷である。三行書きした独特の短歌のなかに「うた」そのものがむきだしで、せつなく、つよく、リアルに息づく。現代になまなまと生きているのである。不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく

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