季刊まちりょくvol.13
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2 10月中旬、台風一過の秋空の下、きむらとしろうじんじんさんと一緒に歩いたのは、仙台市青葉区の米ヶ袋周辺。3年前の2010年10月、じんじんさんが実際に「野のだて点」を行った場所だ。野点といっても、緋毛氈の上でお点前をしてお抹茶をいただくわけではない。まずはド派手なメイクとコスチュームに身を包んだじんじんさんが窯や道具一式を積んだリヤカーを引いて現れる。そして、集まってきた人々が素焼きの茶碗に絵付けをし、その場で茶碗を窯に入れ、焼き上がった茶碗でお茶を味わう……というのが、じんじんさんの野点なのである。 野点は公園や路上や空き地などさまざまな場所で開かれているが、よりふさわしい現場を見つけるために、前もってじんじんさんが実施するのが地元のボランティアスタッフと一緒に街を歩く「散歩会」だ。 「野点の最初の頃は、勝手知ったるスタッフを連れて、路上でパァーッてひと騒ぎ起こして帰るっていうやり方でした(笑)。でもやってるうちに、地元の人たちとがっちり組んで、一緒に街を歩いた方が魅力的な風景が見つけられると気づいたんです。例えば仙台なら、よそ者の僕が『広瀬川の河岸段丘の向こうにビルがニョキニョキ建ってる風景はめちゃめちゃいいと思うわ!』って話をすると、地元の人もちょっと心の地図が動いたりする。そういうプロセスを経ていくと、意外な場所を見つけることができて、それが面白いなあと思い始めたんですよ」野点の旅で日本各地を回るじんじんさん。「ニョキニョキとビルが建っている横がこういう感じの河原っていうのは珍しい。仙台ならではだと思います」

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