季刊まちりょくvol.13
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小滝:自分で場所を選ぶときに、例えば仙台駅東口あたりの再開発が始まったころは、やはり「もうすぐなくなってしまう」という思いで選んで撮影していました。そこに価値があるかは分からないのですが。片倉:街並みの中でも、もうこの店や家の建物はなくなってしまうだろうと、そんな思いでレンズを向ける、写真に残しておこうという思いはあります。佐々木:私の場合は郊外にあるわらぶき屋根の農家や炭焼き小屋なんかが好みで、どうしても多くなります。あと自分の家の近所とかね。小滝:(写真集を眺めて)自分にとってどの写真も価値は同じですが、眺めているとその場所の雰囲気、匂いなんかを思い出します。好きな場所でいえば、若林区の二十人町、河原町。でもそれは自分が昔住んでいたことがあって、その土地に愛着があるからかもしれません。撮っているときは排除しようとしているけど、今写真を見るとそういう思いになります。片倉:撮影したときの天気などは不思議と蘇よみがえってきますね。自分の撮った中に好きな写真が結構ありますが、自分の1枚を選ぶとしたら太白区長町や若林区古城の界隈からかな。――個性を消して記録のための写真を撮り続けることで、普段に生きたことは?佐々木:日常の風景の中で気が付かなかったところに目を向けられるようになりました。車でなら通り過ぎてしまうところを自分の足で歩きながら見るわけですから、ものを見る速度が変わりました。片倉:普段とはものの見方が違うので、いつもは通り過ぎていたものが見えてくるということはありますね。小滝:今になって思うのは、仕事でも仙コレの手法がベースになっていたのではということ。まず建物や風景と正対することから始めるので、仕事のいろ12小滝 誠 (こたき・まこと) 1976年栃木県生まれ。大学の写真部でモノクロプリントの魅力に引き込まれ、写真業界に進む。卒業アルバム制作会社勤務。始めて3年くらいは、修行僧のようでした。

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