季刊まちりょくvol.12
24/100

22art reviewやんや 宮城県を代表する男声合唱団の一つである合唱団Pálinka(パリンカ)創設のきっかけは、1990年の東京混声合唱団桂冠指揮者田中信昭氏との出会いであった。実は時期を同じくして、筆者も大学で田中先生の合唱授業を受講していた。合唱のみならず、音楽や人としての在り方など様々な教えをくださった先生を、声楽専攻生の誰もが慕っていた。田中先生に師事したPálinkaの指揮者・千葉氏も合唱を深く愛し、小学校教諭という多忙な業務の傍ら、宮城県の合唱界を牽引している。 当日の会場が満席であったのは、合唱団が仙台の地で広く愛されている証あかしである。演奏会は5部構成と盛り沢山で、最初から最後まで男声合唱を存分に味わうことができた。演奏は、合唱団の名前の由来となった1曲から始まる。第1部の最初は黒人霊歌《時には母のない子のように》。まっすぐで気持ちの通い合ったア・カペラが見事で、確かな力を持つ合唱団であることをうかがわせた。幅広い世代に親しまれる名曲の後は、ウィテカー作曲《黄金の光》をステージ一杯に広がって歌い、現代合唱曲の魅力を伝えてくれた。 第2部は和合亮一作詩、高嶋みどり作曲の委嘱作品《男声合唱とピアノのための「魂の木を想う、」》完成版の披露であった。第1曲目の〈魂の木を想う、〉では「魂を生きよ、」の連呼が聴く者を次第に祈りへと導いていく。合唱団の想いが素晴らしい作品の誕生につながった。第3部は、なかにしあかね《今日もひとつ》の男声ア・カペラ版にピアノを加えて演奏した。冒頭のヴォカリーズ(母音唱)の温かく柔らかい響きが印象的であった。信長貴富《くちびるに歌を》の熱い演奏には、会場も一ひときわ際大きな拍手を送っていた。男声合唱の魅力を存分に伝えた演奏会合唱団Pálinka 第21回定期演奏会原田 博之(宮城教育大学准教授)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る