季刊まちりょくvol.12
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14合唱指導:千葉敏行先生 このオペラは三善先生のお人柄の素晴らしさ、作品の素晴らしさはもちろんのこと、歌うたびに演奏者が成長できる作品だと思います。特に三善先生の後期の作品はそういう傾向が強く、演奏を通して作品の理解を深めながら、それが私たちの生き方そのものに繋がっていく。どう生きるべきか。聴いた人にもそれが伝わっていくと思っています。 オペラの舞台に立った人間は全員が、一人一人存在感のある在り方をしていないと舞台全体がつまらなくなってしまう。一人一人が歌や動きを考えてやるというのは合唱団員にとってもすごく大事で、自分たちの普段の演奏そのものが変わってくると思います。また普段合唱団で歌ってない人も今回このオペラに参加することで、合唱の魅力や良さを再確認して、合唱団に所属し大きな戦力として活躍してもらえたらな、と思います。主役は合唱団、一人一人です。 その姿そのものが聴いている人、見ている人にきっと強く響いてくるはず。震災を経て音楽をすること、合唱をするということ、そのものを見つめなおした団員たちが歌いあい、演じくらべるところを是非聴いてほしい。演出助手・黙もくやく役:渡部ギュウさん(SENDAI座☆プロジェクト) 14年前の初演は、まずすごく斬新な演出だったのでびっくりしました。ピエロ役みたいな形の黙役という役回りをいただいて。能の様式を使っていたのですが、ユニークにコミカルに楽しくやらせていただいたな、という記憶があります。本番で、十字架の通路から落ちそうになることもありました(笑)。 前回はスタイリッシュだったけれども、今回は荒々しくワイルドに、なおかつクリエイティブに、情熱的な作品になるのではないかな、と思います。 黙役については、常長が旅をしていく時間の中で、その土地の風景というか匂いのようなものを味付けしていく役割なのかなと思いますね。実際にコミカルな、間の抜けた人間も船には乗っていただろうし、日本の侍たちを見て諸外国の人たちも相当驚いただろうし。そういったところで黙役はどんどん変化していくだろうから、やはり楽しくやれたらいいと思います。 人として、支倉常長の我慢の仕方と、つとめを果たして死んでいくというその強さは、観客席から見ていてとても感情移入できると思います。自分のこと、もしくは自分たちのこと、自分たちの街のこととしてしっかりと捉えられる奥深さがあり、なおかつ豪華で楽しめる作品だと思います。だから70分はあっという間で、時代の歴史を学ぶ波にさらわれていく感じ、サン・ファン・バウティスタ号に乗っている感じになりますよね。歴史ロマンの旅に出ると同時に、支倉の生き方がしっかりとみんなの心に刻まれればと思います。あの頃 ~初演・2000年公演を振り返りながら~

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