季刊まちりょくvol.12
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13合唱指揮:今井邦男先生 最初はただただ大きな仕事、しかもとても難しい仕事だと思っていました。今は、登ったことのない山や壁のようなものではなく、むしろその山に取りついてどう歩いていくか。そういう難しさに変わってきています。 とにかく練習に来ている人たちがとても熱心です。この微妙なコーラスは、複雑な音が絡み合わなければ本当の音になりません。三善先生はオペラじゃないオペラを書いてしまったとおっしゃっていますが、ようやくその意味が分かりました。コーラスはコーラスとしてきちっと書かれていて、それがひとつの人格を持つ主役のようなものになっている。そういう中、動きながらのコーラスはなかなかできないんですよ。それをどのように動かすか。演出の先生は色々な方法を持ってらっしゃると思うので、それを見ることが楽しみでもあります。合唱指導:石川浩先生 この曲が難しいというのは、普通のドミソとかいわゆる綺麗な和音というのをやると、聴いている人の中でイメージが固定されるんです。ここは憐れまなくてはいけないとか、喜ぶとか、そういう概念を否応なしに押しつけてしまう。 オペラとは本来ならそういうものなのですが、三善先生がやっているのは、そうではなくて創造させる方法ですね。過去に綺麗だと思われている音を一切排除している。だから、今まで団員の人々が歌ってきた合唱とは、ちょっと質が違っているのです。 この曲の中には能楽の「謡うたい」の要素がいっぱい入っていると思うので、それも聞いてワクワクするような面白さがあるのだろうし「謡」だったら色々な楽器が入る。それが全部オーケストラに出てきているから、非常に日本的な要素を、西洋音楽の基礎に則って作ったというのが聴きどころですね。合唱指導:佐藤淳一先生 自分が関わってきたようなオペラとは違っていて、普通は一日や一晩の話で進行していくことが多いのですが、これは抽象的でいつのまにかローマに着いていたとか、そういうのは初めてだったので、本当にこれはオペラなのかという印象は持っていました。 お客様は結構視覚的にとらえて、幕が開いた途端に舞台装置を見るだけで華やかに感じて拍手が起こったりすることもあります。舞台自体を見るのも楽しみなところです。これは話が必ずしも具体的ではないし、モーツァルトのような聴きやすさはないかもしれませんが、「オペラってこういう世界なんだな」という楽しみ方があると思います。オーケストラがいて、舞台の上で人が歌いながら動いて、そこにコーラスがついて、なおかつ照明や舞台装置がある。とにかく総合的に、音楽と視覚的なものを見る。初めての方は全部分かろうとしなくていいと思うんです。会場に行って、こんな世界があるんだなーという風に、好きか嫌いかというところで判断していただいてもいいと思います。2013年公演のみどころ・ききどころ 〜合唱指揮者・指導者にきく〜

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