季刊まちりょくvol.11
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41949年京都市生まれ。京都大学および同大学院にて哲学・倫理学を専攻。関西大学、大阪大学教授などを経て、2007年から2011年まで大阪大学総長を務める。現在、大谷大学教授。人々と対話しながら物事を考える「臨床哲学」を提唱し実践してきた。おもな著書に『モードの迷宮』(サントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力』(桑原武夫学芸賞)、『「待つ」ということ』、『「ぐずぐず」の理由』(読売文学賞)、『語りきれないこと 危機と傷みの哲学』、『東北の震災と想像力 われわれは何を負わされたのか』(赤坂憲雄との共著)、『<ひと>の現象学』など。2013年4月にせんだいメディアテーク館長に就任。鷲田 清一 わしだ きよかず 「この2年みんなが走り続けてきて、でもちょっと立ち止まって、今後どうしたらいいんだろう、何を目標にしたらいいんだろうとか、元に戻すということはどういうことなのか、と考えたりするときもあるでしょう。また、家族を亡くされたり家や仕事を失ったりした方だったら、自分の人生の初期設定(フォーマット)を書きかえるにはどうしたらいいのか、という課題が出てくる。この課題はひいては社会の初期設定を再考する作業にもつながるはずです。その際に、ふだんは接触がないような人や書物とここでたまたま出会ったり、『生きにくさ』を自分とは別の仕方で表現する現メディアテーク館内を歩く。この日は土曜日。午後のひととき、来館者が思い思いの過ごし方をしている。代アートに触れたりするといった〈遭遇〉が大事になる。その出会いのための場所として、ここ(メディアテーク)があるんじゃないかと思うんです」メディアテークのファサード(正面のガラス)が、木々の緑や光や人々が行きかう街のすがたを映している。そこでいま、鷲田さんは新たな思索と実践に取り組みはじめている。※鷲田さんが東日本大震災後に発表した文章の一部と 大阪大学卒業式総長式辞は、赤坂憲雄氏との共著『東 北の震災と想像力 われわれは何を負わされたのか』 (講談社)に収録されています。

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